|
まず、役者編について。役者は演出されるものです。さて、正常な状態のシミレーション。
-----
全体のバランスとして、演出が明るいイメージにしたいシーンの練習日。
演出:はーい今日はここやります。ここは、次にシリアスなシーンが来るので、あえて明るくして落差を付けます。
役者:あのー、この台詞なんですけど。
演出:何?あ、そこは、からかう感じで。でもあくまで軽くね。
役者:そうですか。明るい感じだとこういうのとこういうのとこういうのがあるんですけど、どれがいいですか?
演出:ちょっと明るすぎ。もうちょっとからかうの強調すると?えっとね、ベースは最初にやったやつで、それにからかいを足してみて。
役者:じゃぁ、こういう風にするのと、こういう案と、逆にこういう風にするのがあるんですけど。
演出:じゃあ三番目ね。それでいきます。
-----
では、異常な状態のシミレーション。
-----
全体のバランスとして、演出が明るいイメージにしたいシーンの練習日。
演出:はーい今日はここやります。ここは、次にシリアスなシーンが来るので、あえて明るくして落差を付けます。
役者:え、そこ、明るいんですか?
演出:うん。
役者:私の考えだとここでの○○の気持ちはこうで、こうなって、こうなんですけど。悲しい、暗い気持ちですよここ。
演出:へぇ。
役者2:え?私の考えだと明るいのも暗いのも違って、普通なんですけど。だってここでの■■の気持ちって、こうこうこうじゃないんですか?
演出:へぇ。でも明るくやって。落差つけたいから。際だたないでしょ。
役者:ふぅん。役の気持ちはいいんですかぁ?
-----
要するに、役者が勝手に演出家になっちゃって、
イメージを限定しているんですね。
演出のイメージは絶対です。かといって、発言権が役者にない訳じゃありません。ただし発言するのは、全体のバランスを考えて言うべきなのです。例えば、
-----
演出:はーい今日はここやります。ここは、次にシリアスなシーンが来るので、あえて明るくして落差を付けます。
役者:あの、ここのシーン、明るいんだけど不安がおそってくる感じじゃダメですか?
演出:それってどうやるの?
役者:あの、笑ってるんだけど、から元気みたいな。明かりとかも明るくしてあって、音楽も明るいんだけど、空虚な感じで。(役者を集め)昨日相談したみたいにやってみて。
役者:(実演)
演出:なるほど。そっちの方がいいね。そうしよう。
-----
つまりどういうことか。
必要なのは、まず、
1.演出が方針を明示すること。
2.役者はその方針に沿って、いくつかの案を提示すること。
3.役者が、演出の出した方針に疑問を感じるならば、説得力のある実演を伴った方針を打ち出すこと。
です。無理だと思いますか?
でも、冷静に考えてみてください。少なくとも私は、「ここは明るくするから」と演出に言われた効果、照明などのスタッフが、「じゃあこれにします。文句言わないでください。案は一つだけです」とか、ましてや「ここは暗いはずだと思うんですけど。演出間違ってません?」とか言う場面に出くわしたことはありません。
スタッフでは、「ここは明るくするから」「あ、そうですか。じゃぁ前ライトと真ん中付けましょうか。あとスポットも要りますか?ホリゾントを黄色っぽくするって手もありますよね。」や、「こういうテンポのいい明るさと、朝焼けみたいな明るさと、青春っぽい、ギャグみたいな曲があるんですけど、あと他に候補としては・・・」ってうのが常識のはず。
スタッフに出来ることが何故役者に出来ない。
私は、これは「気持ちを考えて!気持ちを考えて!」っていう、ガラスの仮面かなんかの影響だと思うんですね。確かに気持ちを考えてもいいです。いっこうに構いません。けど、気持ちを考えて実際表現できなきゃ意味無しです。ほんとは、表現できた上にお客さんの気持ちを、劇場の雰囲気を動かせなければ意味無しなんですが、まずは表現です。表現の多様性と想像力です。
極端な話、「私淋しいの」という台詞があったとします。これでどれだけのシーンが想像できますか?ちょっとやってみてください。そして想像した後、下をドラッグしてください。
●彼氏にふられた女の子が友人に相談してる。最初は怒っていたが、次第に自分の気持ちに気づく(悲しそうに、など。)
●水商売なりたてのオンナノコが、帰りそうになるお客さんを引き留めるために言う。(ぶりっこっぽく、後で舌出して笑ったりして)
●いじめっこが、女の子の日記を広げて、書いてある詩を読む。(棒読み、あとで大笑い。)
●感情を知らなかったロボットが次第に感情を知っていく。「淋しい」という感情を初めて知った。(さみしさを感じたことを嬉しがって)
●犬を十匹も飼っている人が、「何で犬を飼っているんですか?」時聞かれて(あっけらかんと。犬たちの頭をなでながら)
●待ち合わせの場所に行ったら、友達がもう家に帰っちゃったとき、小さな女の子が。(今にも泣き出しそうに)
などなど、あるでしょうが、例えば一番最初のもの。これは、どんな読み方が考えられるでしょう?(考えたらドラッグ)
(自分の気持ちに気づき、帰ってきて欲しいという悲しみ。「私・・・・淋しいの・・・っ・・・!」)
(ふと自分の気持ちを認識し、正直になろうと思う気持ち。「そう、私、淋しいの。(何で素直にならなかったのかしら)」)
(友人を頼るような気持ち。「私・・・淋しいの!(今はあなたに頼らせて)」)
(今までこんな簡単なことを気づかなかった自分を嘲笑し「そ、私、淋しいの。ははっ」)
(また怒りがぶり返す。「私淋しいの。なのに構ってくれなかったんだから!(なんで気づかなかったんだよぉ!)」)
私はここでいくつかの場面設定と、一つの場面設定に対する数パターンの感情の流れを書きましたが、この程度の想像力は持っていて当たり前です。十分くらい考えれば、これくらいは出てくるはずです。
これでずいぶん演技も変わってきますよね。これが、「いくつかの案を提示する」ということです。これが役者の仕事であり、滑舌やら早口言葉やらストレッチなんかは普通の人でも出来ます。覚えるだけですから。創造性のカケラも要りませんし、想像力も使いません。
演出が「明るくする」と言ったら、どんなことが浮かびますか?今、台詞の制限無しで、「この場を明るくして」と言われたら。考えてみてください。照明も、音響もです。その後下をドラッグ。
役者:走り回る。踊り出す。一人標的を決めて明るくからかう。無垢な子供になりきる。子供の遊びを始める。文化祭、体育祭などのおまつりのような忙しさを表現する。(ものを探す、忙しく動き回る、指示が飛び交う)最初に一人をぽつんと座らせて置いて、そこにみんなが迎えに来る。酒が入った演技をする。パントマイムのみで話を作ってみる、など。
音響効果:明るい音楽をかける、手拍子を入れる、だんだん音を大きくする。
照明:明るくする、ホリゾントを黄色っぽくする、曲にあわせて明かりをフラッシュさせるなど。
何故演出がいるのか、分かりましたか?役者に自分の想像をやらせるためにいるのではなくて、役者の豊富すぎる想像力を、一つにまとめるためにいるのです。
役者が、「あれもできるしこれもできる。あ〜、どれをやろうかなぁ。」と思っているときに、「じゃぁ、全体のバランスも考えて、これをやったら?」というのが演出です。
さて、役者の基本が「想像力」「表現力」であることはご理解いただけたと思います。けれど、役者はよく、やるべき仕事が分からなくなります。一人でいるとき、共通のシーンがない役の人と一緒にいるとき、何をしたらいいのか。それを考えていきましょう。
|