*small world〜びんの中の世界〜


(ヒロト、早苗、ミドリ、ユウヤ、大黒屋、部員1、2、3、4、如月)


ヒロト  僕がこれから話すのは、僕が出逢った小さな世界について。それは、ある日の放課後、僕たち四人組が学校に残って遊んでいたときだった。
(幕が開く。右側には机、そしてその上には実験器具が。左側には跳び箱で囲った空間。)
早苗   うわ、すごい色。これなんの薬だろうね。
ミドリ  これ、あの人の机でしょ。化学部の部長の・・・・・なんて言ったっけ。あの人。
ヒロト  大黒屋か?
ミドリ  そうそう、大黒屋くん。
ユウヤ  あいつ、いっつも変な薬作ってるからな。だいたい失敗してるけど。
早苗   面白い人だよね。あの人。
(大黒屋、走ってくる)
大黒屋  きみたち!何やってるんだ!
ユウヤ  あ、大黒屋。お前の失敗作を見てたんだよ。なんだ?この緑色の薬。
大黒屋  失敗作じゃない!立派な、本物の薬だ。
ヒロト  試したのかよ。
大黒屋  なに言ってるんだ。この薬を試したら、僕は犯罪者だ。
ミドリ  じゃあ、成功したかどうか分からないじゃない!
大黒屋  失敗しているはずはないんだ。だから成功しているんだ。
ユウヤ  はいはい、分かったよ。
早苗   すっごい色だよね。どうやったらこんな風になるわけ?
大黒屋  君たちにはわからない、不思議な作り方でつくってあるんだよ!さあ、危ないからどいたどいた!
ヒロト  何の薬かぐらい教えてくれたっていいじゃないか。
ミドリ  そうよ。何の薬なのよ!
大黒屋  (大げさに)そうか、そこまで言うなら仕方ない。教えてやろう。みんな!
(部員1〜4が登場。盛大な音楽)
部員1  これは我が化学部部長、大黒屋英介のつくった最高傑作!
部員2  メロンソーダの甘みと、コーンポタージュのとろみを兼ね備え、
部員3  なおかつ薬としても奇跡的な効能のある
部員4  すばらしい液体なのだ!!

ユウヤ  結局何の薬なんだよ!
大黒屋  要するに、飲んだものの身体を小さくする薬だ。ほら、「不思議の国のアリス」って童話があるだろう?あれに出てくるクッキーと同じ様なものだよ。

早苗   じゃあ、それを飲んだら本当に小さくなれるの?
大黒屋  もちろん。
ヒロト  早苗、お前なぁ、本当にそんな薬があると思うか?
ミドリ  失敗作に決まってるでしょ。
ユウヤ  そうそう。だって俺、大黒屋の作った薬で成功したの見たことないぜ。
早苗   そう・・・・かなぁ・・・・
大黒屋  信じないのか?だったら飲んで見ろよ。
部員3  そうだ。飲んで見ろ。
部員2  そうそう。飲んでみなさいよ。
ユウヤ  ああ、いいよ。・・・さっきの「メロンソーダの甘みと、コーンポタージュのとろみ」っていうのはちょっとヤだけどな。
ヒロト  僕も飲んでみて構わないな。
ミドリ  あたしも、飲んで見せようじゃないの。
早苗   みんな飲むの?だったら、あたしも・・・・・
大黒屋  だったら決まりだな。進んで実験台になってくれるとはありがたい。じゃあ、みんな、彼らにコップを渡してあげてくれ。
(部員たち、それぞれに紙コップを渡す。)
ミドリ  行くわよ。
ヒロト  ああ。
ユウヤ  さっさと飲んじまおうぜ。
早苗   ほんとに小さくなるのかなぁ・・・・・・・
(四人、飲む。その瞬間舞台が真っ暗になる。めまいがするような音。明るくなると、四人は消えている。)
大黒屋  消えた・・・・・・・・?
部員4  ・・・・成功だ・・・・・・
部員2  そうよ!成功よ!
部員1  早速祝いましょう。部長!
部員4  さあ、コンビニでポテトチップスでも買ってきて・・・・・
(と言いながら化学部たち去る。そして、四人不安そうに歩きながら出てくる。)
ヒロト  どういう・・・・・ことだ?
ミドリ  ここ・・・・・どこ?
ユウヤ  あ!あれ、(と、客席の後ろを指さし)さっき俺が机の上に置いた財布だ!
ヒロト  ユウヤの財布があそこにあるって事は・・・・じゃあここは、さっき僕たちの目の前にあった机の上ってことか?
早苗   すごい!あたしたち、本当に小さくなっちゃったんだ!
ミドリ  早苗、そんなこと言ってる場合じゃないわよ。あたしたちこれからどうするのよ!
ユウヤ  そうだな・・・・ここにいたら危険だ。
ヒロト  とりあえず安全そうな場所に移ろう。どこかないかな・・・・
早苗   ねえ、ヒロト、あのびんの中はどうかなぁ?からっぽだし、外から見えるから大黒屋君が見つけてくれるかもよ?
ミドリ  そう・・・そうね。とりあえずあのびんの中に入りましょう。
(四人、跳び箱で囲われた空間にはいる。)
ユウヤ  ちょっと狭くないか?
ミドリ  我慢しましょう。
(と、如月がやってくる。(右側の机の上のびんを持ち上げる))
ヒロト  あれ・・・生物部の如月じゃないか?お〜い、如月!助けてくれ!
如月   やだ。標本用のびんが空きっぱなしじゃない。ふたしなくちゃ。
(如月、手にしたびんにふたをする)
ユウヤ  やばいんじゃないか?如月、怪力女として有名だぞ。アイツにふたなんか閉められたら・・・・
(如月、ふたをきつくきつくしめる。)
ミドリ  出られなくなっちゃうじゃない!!
(如月、びんを机の上に戻し、)
如月   きっと誰かがあけっぱなしにしておいたのね。注意しなくちゃ。
(如月去る。)
早苗   いっちゃった・・・・・・
ヒロト  もう出られないな。
ユウヤ  誰だよ。薬を飲んでみようなんて言い出したの。
ミドリ  ユウヤ、あなたよ。
ユウヤ  そうか、俺か・・・・。
(間。ヒロト、ミドリがユウヤを見つめる)
ユウヤ  な・・・・何だよ。
ミドリ  ・・・・・・・・。
ヒロト  ・・・・・・・・。
ユウヤ  何だよ!俺が悪いって言うのかよ!
ミドリ  出られなく、なっちゃったのよ・・・・・?
早苗   ユウヤ君がわるいんじゃないよ。だって、みんな一緒に飲んだんだもん。あの薬。
ヒロト  責める気はないさ。でも・・・・飲まなければ良かったな。
ミドリ  そうね・・・・・・
(化学部員たちもどってくる。)
早苗   あ!大黒屋君たちがもどってきた!
部員4  いやぁ、しかし、大成功でしたねぇ。
大黒屋  そうだな。
部員3  そういえば、あの四人いまどこにいるんでしょうね。
(間)
大黒屋  わすれてた!あの四人、小さくなってるんだ!
(と、あたりを見渡しながら)
大黒屋  しまった・・・・・お〜い!!どこにいるんだ!ほら、みんな探せ!
部員1  床にはいないみたい。
部員3  机の上はどうだ?ああ、ごちゃごちゃしていてわかりにくい!
部員2  もしかしたら実験器具の中とかじゃないの?
部員4  教室の外かもしれないぞ。
大黒屋  よし、(と、部員4に)お前は教室の外を探してくれ。そしてお前は、(と、部員1に)この教室の床をすみずみまでもう一度調べてくれ。そして(と、部員3に)お前は机の上。実験器具も一つ一つ調べるんだ!
部員たち はいっ!
(部員たち、指示されたところを探し始める。(部員4は去る))
ヒロト  探してくれてるんだ。すぐ見つけてくれるよ!
ユウヤ  ゴメン。悪かった。俺のせいだよな。こんな事になったの。
ミドリ  大丈夫よ。入ったのがこのびんで良かったわ。採集用のだからふたのてっぺんに穴があけてある。窒息することはないんだもの。
早苗   大黒屋君、はやく!
(四人、期待と不安の混じった表情で上を見上げる。しばらくすると、部員がびんの一つをしげしげと眺め始める)
部員2  あれ・・・・・この中に入ってるのは・・・・
ヒロト  見つけてくれたぞ!
ミドリ  本当!
(部員、びんを持ち上げる。四人が転ぶ)
ユウヤ  (上に向かって)急に持ち上げるな!
部員2  これ・・・・虫かなぁ?
大黒屋  何か見つかったのか!?
(部員たちが部員2の所に集まる)
部員2  いや・・・・これって、虫なんでしょうか?
大黒屋  どれ、ちょっと見せてくれ。(と、びんを受け取り、)ちょっとだれか、虫眼鏡を。
(部員3、机の上にあった虫眼鏡を手渡す。大黒屋、のぞき込む。)
早苗   お〜い!大黒屋君!
ユウヤ  大黒屋!助けてくれ!
大黒屋  虫じゃない。四人がいたぞ!
(部員たち、喜ぶ。)
ヒロト  早く元に戻してくれ!!
大黒屋  何を言ってるのかは分からないな。しかしとりあえず元に戻る薬を作らなければ。
部員1  どうやって作るんですか?
大黒屋  ここにメモがある。読み上げるから、出来るだけ早く調達してきてくれ。え〜と・・・?

「川原先生の球技大会の応援の心、五百ミリリットル。松吉先生の応援の心と合わせて、一リットル。そして、松吉先生のまだら染めの髪の毛、三本。出町先生の霊感で呼んだ霊、三体。山根先生の踊り、かっこ、イングリッシュソングつき、かっことじ。斉藤先生の名言「この期に及んで」三回分。さいごに、青木先生のおなら、袋一杯。」

(この部分は上演する学校によって変えて下さい。先生のクセや一年の想い出などを台詞にして下さい)

さぁ、みんな、集めてこい!
(部員たち走り出す。先生がその場にいるならば、その先生の所に行ってお辞儀をし、またはしってもどってくる。いない先生の所は、体育館を出て、しばらくして戻ってくる。その時大黒屋は「早くしろ!」とか、「襲い!なにやってるんだアイツは」などといっている。時計などを見るのも効果的。)

(部員たち、戻ってくる。そして材料を大黒屋に手渡す。おならを持っている人は臭そうに。)
大黒屋  よし、材料は全て揃った!これから制作に取りかかる。

ミドリ  早く!
ヒロト  がんばれ!

大黒屋  (なにやら実験器具をいじりながら)まずは応援の心をまぜて・・・・そのあとで「この期に及んで」を・・・(そして赤い色の液体が入った三角フラスコを高くかざし)出来た!

部員3  すばらしい!
部員2  これで助かるわね。
部員4  さあ、びんのふたを開けよう。
(部員4、明けようとするがあかない。)
部員4  あかないな。
部員3  俺に貸してみてくれ。
(あかない。)
部員2  私はどうかしら?
(あかない)
部員1  私がやってみるわ。
(あかない)
部員3  部長!あきません!
大黒屋  何?あかない?貸してみろ。
(あかない)
大黒屋  くそ・・・・・だれだ!こんなにきつく閉めたのは!
部員1  四人が何か言ってます!
(ヒロト、手で数字の2を表す)
大黒屋  2?2がどうかしたのか?
(ヒロト、手で○をつくり、それを月のようにかけさせていく)
大黒屋  まる・・・・・?そうか!月、月か!2と月で、二月!二月の別名は「如月」!そうか、このびんのふたをしめたのはあの怪力女か!
(ヒロト、うなずく)
大黒屋  おい!如月を連れてこい!
(部員3が走り出す。すぐに如月をつれてくる)
如月   何?何の用?
部員3  このびんのふたを開けてくれ。
如月   どうして?
部員2  いいから早く!
(如月、軽々と開ける。四人、跳び箱の前に出てくる)
ミドリ  やった!
ユウヤ  やっと出れたな!
大黒屋  さあ、薬がここにある。みんな飲むんだ!
如月   一体何なのよ?
部員4  あとで説明する。
如月   もう、あたしだって忙しいんだから・・・・(去る)
ヒロト  薬はどこだ?
大黒屋  ほら、そのびんの横だよ。一滴おいてある。
(四人、手ですくって飲む。一瞬舞台が真っ暗になり、明るくなると実験道具の前に四人が立っている)
大黒屋  よかったな。
ユウヤ  ああ。
(ヒロト、びんを持ち上げる。みんなが不思議そうに見る)
ヒロト  僕たち・・・・このびんの中にいたんだなぁ・・・・
ミドリ  そうね。夢みたい。
早苗   大人になったら、こんな世界のこと忘れちゃうね。きっと。
ユウヤ  そう・・・だな。
早苗   なんだかさぁ、あの歌みたいだね。なんだったけ、え〜と・・・
ミドリ  「小さな世界」?
早苗   そう。「小さな世界」

(合唱。役者も歌う。歌い終わり、ヒロト以外みんな去る)

ヒロト  これで、僕の体験した小さな世界の物語は終わる。この学校は、世界全部から見たらちっぽけな、びんの中とたいして変わらない小さな世界かも知れない。でも、ここであったことは、忘れちゃいけない。きっとそれは、大切なこと。

(大黒屋がやってくる)
大黒屋  ヒロト、行こう。
ヒロト  ああ。
(二人去ろうとする。大黒屋がふと立ち止まり、言う。)
大黒屋  あ、そうだ。一つ言い忘れていた。先生方、四人を大きくするために、ご協力ありがとうございました!

(幕。)

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