| 「ひかりのはこ」 |
チロル、あつし、花(50分)
そうしてぼくは
走査線の間から
君のおもいでをすくい上げる。
チロル…白い猫。性別はどちらでも。ものがたりの主人公。
黄色い花…水仙。ナルシスト。うぬぼれや。ワガママ。でも、憎めない(…かなぁ?)
あつし…あっちゃん。小学生。ふたりとなかよし。やさしいけど、わんぱく。
暗い舞台。
どたばたする音。
猫たちの鳴き声。
チロル やだやだやだやだやだやだやーだっ!にーちゃん。お母さーん。こらっ!はなせ!離せってばあ。 ひっかくぞ。かみつくぞっ!もー、放してよーっ!あっ!その猫じゃらし、ボクのだぞ!勝手に取るな!フーッ!『じゃあこの子いただいていきます。』『宜しくお願いしますねー。』『ほんと、可愛い子』何?ボク、可愛い?かわいい?かわいい?嬉しいなーっ!…って、そんなこと言ってる場合 じゃなくて!
チロル 前方、箱発見!え?なに?まさか…(どてっ。)
チロル …いったー。何するんだよぉ…。うぉっ!?(ごろごろごろ…)う、わぁあぁっ!(どたどたどた …)(上から何かが落ちてくる)あ。ボクの猫じゃらし。ありがと、ニンゲンさん。…真っ暗だな あ。あ、いて。揺れる揺れる揺れるぞ?ごっとん、ごっとん、…どこ行くんだろ?あーなんかぐるぐるしてきた。
花の声 もう…葉っぱが曲がっちゃう。ああもうっ!
チロル あれ?ねえ、誰か何か言った?
花の声 言ったけど。あ、葉っぱ折れた!いったぁーい。もー、まだなの?
チロル ねー。ボクもはやく外に出たいよ。キミの周りも真っ暗?
花の声 暗くないけど狭すぎなのよ。この箱っ!邪魔!
チロル あ、もしかしてボクのい…
止まる箱。
二人 あ。
花の声 やっとついたあ。
チロル 出られるかな?出られそうだぞ?
花の声 あーあ。やっと広いとこに出られた。…でも日光がいまいち。
チロル この箱の外にいるの?まってね、今出てみるから。(跳ねて、跳ねて、跳ねて、どてっ!)
舞台明るく
チロル いてててて。うわっ!まぶしいな。あ、畳だ畳だ。わあーい。テレビもある!カーテン、カーテン(探検しながらひっかいたりかみついたり遊んだり)(花の近くに行って上を見上げ)うわー。きれいな黄色!
花 ねえ、白猫くん。
チロル うん?
花 …踏まないでくれる?痛いんだけど。
チロル あ、ご、ごめん!痛かった?
花 さわんないで。
チロル …ごめん。
花 (つーん。)
チロル (もじもじ。)
花 (つーん。)
チロル ねえ。
花 なあに?
チロル キミは、だれ?
花 先に名乗ったら?
チロル ボクは、コバヤシさんってニンゲンに飼われてたんだ。お兄ちゃんも妹もいたし、お母さんともいっしょだったよ。でも、ニンゲンが二人来て、この箱にぽーんって。…よくわかんないや。
花 あたしは浦上花店ってところから来たのよ。そこでも一、二を争うアイドルだったんだから。
チロル ふうん。キミの黄色、とってもキレイだもんね!…ねえ、ここ、どこかなあ?
花 そんなことも知らないの?
チロル 何?キミは知ってるの?
花 ええ。あたしを買っていった人たちが言ってたわ。『息子の入学祝いで』って。
チロル じゃあその人達の家?…あ、ニンゲンが来た。
あっちゃんとチロル、遭遇。
警戒。好奇心。
双方動こうとする。
再度警戒。
ちかづいたり、離れたり。
双方、動けない感じ。
(音楽に乗せてギャグっぽく見せてもいい)
チロル (意を決して)…や、やあっ!
あつし ………
チロル ………
あつし ねこだーーーーーっ!
チロル ねこだよーーーーっ?
あつし しゃべってるーっ!
チロル 分かるの!?
花 バカねえ。ニンゲンに分かるわけないじゃない。
あつし 花もしゃべってるーっ!
花 分かるの!?
三すくみ。
あつし うれしいな。ぼく、はぎもとあつし。あっちゃん、って呼んでね。
花 …何でこの子不思議に思わないのよ。
あつし お父さんが言ってたよ。人間以外の生き物にも心がある、って。ぼく、ずっと犬や猫や木やお花と しゃべってみたいな、って思ってた。
チロル ボクもあっちゃんとしゃべれて嬉しいよ。キミは嬉しくないの?
花 嬉しいわよ。違和感あるけど。
あつし ぼくね、これから一年生になるんだ。いっぱいいっぱい遊ぼうね!
チロル うん!遊ぼうね。
あつし きみの名前、おしえてよ。
チロル えー?名前?
あつし 何て名前?何て呼べばいい?
チロル うーん。仲間やお母さんには、「おい」とか「なあ」とか「坊や」とか…あ、あとコバヤシさんには「白いの」って呼ばれてた。
あつし それ、名前じゃないよ。
花 あつしくんが…
あつし あっちゃんって呼んでよ。
花 あっちゃんがつけたら?この子の名前。
あつし ぼくが?
チロル うん。いいよ。名前つけて。ボクは?
あつし きみは…
チロル ボクは?
あつし うーん、と。チロル!
チロル チロル!
花 チロル。いいんじゃない?
チロル うん。すっごいいいよ。かっこいい。
あつし (照れて)そうかなあ。チロル!
チロル なーに?
花 チロル!
チロル はいはーい!
あつし この子にも名前つけようよ。
花 あたしに?
チロル んー。じゃあ、黄色だから…イエロー!
花 そんな安直なのは嫌。
チロル えー?宇宙戦隊トトレンジャーみたいでカッコイイのに。
花 何それ。もっと可愛いのにしてよね。
あつし 黄色だから…き。
チロル き。き…
花 き…
チロル キャサリン!
あつし 呼びにくいよ。それじゃ。き…
花 き。き。き…
チロル イエロー、だめ?
花 い・や。
あつし き…キキ!
チロル キキ?
あつし キキ。
花 うん。キキ。いいと思う。キキ。
あつし 気に入った?
花 うん。キキ、でいいわ。
チロル キキ。チロル。あっちゃん。あれ?キキ。
花 何?
チロル この葉っぱ、折れてる。
花 袋に入れられて運ばれた上に、貴方が乗っかってくれちゃったから…
チロル あ…ごめん。
花 いいえ別にお構いなく。
あつし パパ呼んでこようか?
花 そんな…いいわよ。迷惑かけちゃいけないし。
あつし でもさ…
花 ん?
あつし この葉っぱがあるとブサイクだよ?
チロル うん。これ、ブサイクだよ。
花 (ぷち。)ブサイクブサイクいわないで。
二人 …ごめん。
花 あたし、ブサイク?ねえ?
チロル ううん!綺麗だよ!
あつし 僕もすごく綺麗だと思うよ!
チロル てれびにだって出れるよきっと。
花 …「てれび」?
チロル うん。この箱。
花 …ふぅん。
あつし ねえねえ、小学校のたんけんに行こうよ!
チロル 今から?
あつし 今から!
チロル 行っちゃおうか。
あつし 行こうよ。(花に)おみやげ話、いっぱいもってくるね!
二人去る
花 あ…。
花 (おれた葉っぱがどこかに当たったらしく)痛っ!…ブサイクとかブサイクじゃないとかいう以前 に、痛いのよねこれ。あ、いたたた。
花 …だれかー。(小声で)誰か、いませんか?あつし君。あつし君のお父さーん。あっちゃん、チロ ル!
花 ………。あ。まぶし。…空がきれい。
二人飛び出てきて
あつし チロル!空、真っ青だねー。
チロル ねー。
あつし ブルーハワイのかき氷みたいだね。
チロル 何?それ。
あつし チロル知らないの?甘くて冷たくて真っ青できらきらしてるかき氷!
チロル ……
あつし 知らないんだ。おいしいのになー。
チロル それ、おいしいの?
あつし すっっっっっっっっっっごぉくおいしいよ!
チロル ボクも食べたいよ。ね、食べよ?
あつし そうだなあ…夏にならないと食べられないよ。
チロル 夏、って、みーんみーん、って虫がいて、暑くて暑くて、お日様ぎらぎらなもの?
あつし そうそう。あと三ヶ月ちょっとすれば夏だよ。
チロル そっかあ。朝ご飯食べて、昼ご飯食べて、夜ご飯食べて、それ、何回?
あつし んーとね、んーとね。ちょっといっぱい。
チロル ちょっと?いっぱい?どっち?
あつし ちょっといっぱいなんだよ。
チロル ふうん、そっか。そのかき氷っての、三人でいっしょに食べようね!
あつし うん。食べたいね、食べようね。
チロル あっちゃん、これ、なに?
あつし 神社だよ。
チロル 探検、できるかな。
あつし えー?小学校のたんけんでしょ?
チロル 探検って行き先が決まってるモノじゃないんだよ。未知の世界だったら、どこにでも勇敢に立ち向かわなくちゃ。
あつし そっか。勇敢に、か。
チロル そうだよ。勇敢に、だよ。
あつし 神社って、怖いよね。
チロル 怖いとこなの?
あつし キツネが油揚げくわえて踊るんだって。
チロル …全然こわそうじゃないよ。
あつし だって、キツネだよ?この石のキツネ、踊るんだよ?
チロル 怖くないよっ!踊れるもんなら踊ってみやがれ。やーいやーい!
あつし あ、チロルだめだよ、お供え物取っちゃ!
チロル 行こう行こう!
あつし あ、チロルってばあ!
そしてひとりぼっちの花
花 もうだいぶたつのに…
花 …あ、あつし君のお母さん。お帰りなさい。
あっちゃんのママ、テレビをつけた模様。
花 うわぁ。何この箱…人が、人が動いてる!あつしくんのお母さん!なんか、人がしゃべってます!おーい!とか言っても聞こえるわけはないんだけど…。変なの。青空。もうこっちは赤くなりはじめてるのに…なになに?
花 『あんなに綺麗だった桜も、もう全て散ってしまいましたね。これからは若葉が出てきて、新緑の季節となります。いいですねー。日差しも、強くなりますけれども、これからもう夏ですね。みなさん、桜の下を通るときには、枝のさきっぽの緑がどんどん膨らんでいくのを見てみてくださいね。毛虫にはお気をつけて。』
あっちゃんとチロル、たんけん中。
チロル 油揚げうまかったなぁ〜。
あつし …後で呪われないといいけど。
チロル 小学校、どっち?
あつし そこの階段上って、こっちこっち!
チロル えー?ここ?
コンクリートの塀に穴。その向こうは草ぼうぼうの空き地。そしてその向こうには柵。
そしてその向こうが、小学校の花壇そして校庭。
あつし だって、神社からすぐ小学校に行くにはこれしかないよ。
チロル ボクは平気だけど、あっちゃんはだいじょぶ?
あつし 僕は平気だよ。何回も通ったことあるし。それよりチロルは、だいじょぶかなあ?
チロル 何だよ。怖くないよーだ。ボク猫だもん。狭いとこは得意だもんねー。
あつし じゃあさきに行ってごらんよ。
チロル 壁さん、失礼しまーす。あ、いた。鉄の棒が出てるよ。んーーよいしょっと。
チロル あああーーーーーっ!
あつし そ。毛虫さんがいるんだよ。
チロル 今、今、今、目があったぁ。
あつし そんなに怖くないって。目があっても、かみつかないし。
チロル 良かったー踏まなくて。うじゃうじゃうじゃうじゃ…
あつし うん。そこに固まってるだけ。桜の木があるんだよ。
チロル 桜の、木?
あつし 上見るとたまに落ちてくるよ。
チロル …ぜったい、見ない。
あつし キキに持ってこうよ。
チロル 女の子に見せるのはどうかなぁ…
あつし 「ぎゃーっ!」って言うかもしれないね。
チロル 普通言うと思うよ。
あつし 一匹だけ持ってく。それでこうやって持って…。ねえチロルー!いいもの見せてあげる。
チロル ん?何?
あつし はいっ!
チロル ぎゃぁーっ!
あつし おっもしろいなっ♪
チロル あとでキキ、怒っても知らないよ。
あつし 平気平気!
チロル なんでそんなの好きなの。
あつし 毛虫さんもだんごむしも友達だもん。
チロル ボクは「友達の友達はみな友達」って思ってるけど、毛虫はやだからね。
あつし そっか。残念だな。毛虫さん、毛虫さん、っと。そこ抜けると小学校だよ。
チロル うわー。でっかい!
あつし ぼく、ここに通ってるんだよ。
チロル 何してるの?
あつし それは、べんきょうだよ。
チロル べんきょうって?
あつし ひらがな、漢字、たしざん、ひきざん…
チロル ふーん。楽しい?
あつし うん。楽しいよ。
チロル とりがいるー!あ、怖っ!えーいつっつくなー。
あつし ニワトリ怖いよね。二年生になったら、小屋の掃除やんなきゃいけないんだ。
チロル そっかあ。怖いね。
あつし つっつかれるんだって。
チロル ねえ、折角冒険なんだからさ、中入ろうよ。
あつし 中?んーと、まってね。
あっちゃん、校庭からの通用門があいているかを確認。
あつし …だめだぁチロル、あいてないよ。
チロル どれどれ?ボクなら入れるよ
あつし 勝手に入ったら怒られちゃうよ。
チロル 平気だよ。だってボク猫だもん♪
五時の音楽。
あつし ほら。帰る時間だよ。
チロル ちぇ。ボクもキキにおみやげ持っていきたかったのに。
あつし なら、これにしなよ。ニワトリのこの羽根、ふわふわで白くてきれいだよ。
チロル うーん。じゃ、そうする。
あつし 急いでかえらなきゃ。おかあさん、心配してるよ。
チロル …また毛虫のとこ通るの?
あつし 帰りは早いほうで行こう。家に向かって、しゅっぱーつ!
チロル アイアイサー!
独りで空を見る花のところに、二人とびだして。
二人 ただいまー!
花 あ、おかえり。
あつし ねえ、いいものあげるー。
チロル ボクも、いいものあげるー。
花 …チロルのはなんか怪しいわね。
チロル 怪しくないよ。あっちゃ…
あつし (チロルの口をふさぎ)まぁまぁ。いい?じゃあ、目、つむって。
花 つむったよ。
あつし (手を花の目の前に)あけて!
花 (目を開けて)………。
しーん。
花 あーーーーーーーーーぁああっ。(くらくらくら)
チロル あ、キキ!だ、だいじょうぶ?
花 け、け、け、け、け、け、け。
あつし け?
花 毛虫〜〜〜〜?!(くらくらくら)
チロル あっちゃん、しまって、しまって。
あつし …ごめん。そんなに驚くと思ってなかったから…
チロル はいこっちむいてー。…だいじょぶ?
花 あつし君って意外と悪ガキだったのねぇ。
チロル うん。毛虫とはトモダチになりたくないよね。
あつし (窓から毛虫をそっと逃がして)キキ、ごめんね。
花 あっちゃん、びっくり箱とか、なら、いいけど。虫はやめて。
あつし うん。わかった。ごめんね。
花 今日はどうだったの?たんけん。
チロル その前にボクが見つけてきたおみやげもらってよ。
花 …虫じゃない?
チロル 虫じゃないよ。(出して)これ!
花 …羽根?
チロル ニワトリっていう怖い鳥の羽。
あつし そうそう。来年から小屋の掃除しなきゃいけないんだ。
花 大変ねえ。
チロル ボクも近くで見てみたけどさ、くちばしとか、鋭くて、痛そうだったよ。
あつし そうそう。あれ痛いんだって。
チロル あとはねえ、そうだ、神社ってとこに行ったんだ。
花 そこには何があるの?
チロル あぶらあげ!
あつし チロル違うよ。あれはお供え物だったんだよ。
花 チロル、あなたお供え物取っちゃったの?
あつし そう。食べちゃった。
花 お供え物ってとっても大切なモノなんだから。私の居たところでも、お供え物になる花は必ず、きれいでおしとやかな花が選ばれてたのよ。
チロル キキはおしとやかじゃないから、お供え物じゃないの?
花 うるさいわね。私みたいな豪華絢爛、才色兼備な花は、お祝い事に使われるの。
あつし ぼくが小学校に入ったから来たんだよね。
花 そういうこと。
チロル あ、テレビがついてる。
あつし ほんとだ。消さなきゃ。(ママに呼ばれた)はぁーい。(テレビを消していこうとして)
チロル あ、消さないでよ。これからトトレンジャーなんだから。
あつし えー?…わかった。(ママに)うん、今いくよー。
あっちゃん去る
チロル よっしゃ。お、ブルーだ。ラーメン…うまそうだなぁ…
花 ねえ、チロル。
チロル んー?
花 今日は外、どうだった?
チロル 楽しかったよ。神社の石のキツネとか、そうそう、ブルーハワイ、っていう食べ物のことも聞いたっけ。あ、あとね、空がきれいだったよ。
花 そう。…ねえ、この箱、なあに?
チロル テレビだよ。
花 この中にすごくきれいな景色とか、人とかがうつってたの。不思議よね。
チロル うん。不思議だよね。
花 外はきれいだった?
チロル うん。きれいだったよ。
花 外は楽しかった?
チロル うん。楽しかったよ。うわぁ、お花畑だ。あーピンク、気をつけて!後ろに…
花 (何かをつぶやく。)
明かり、フェードアウト。
そしてフェードイン。
チロルおさんぽ中。
チロル まずは神社、神社。ラッキー。いっただきまーす。おおっと、神主さんになんかつかまるもんか!へへーんだ。で。腹ごしらえをしたところで…ダメダメ。そっちはくわばらくわばら。うじゃうじゃのけむけむは勘弁だし…戻って小学校に行こうかな。あれ?
遠くにあっちゃんを見つけて
チロル あっちゃん!
あつし あ、チロル!
チロル もう学校、終わりなの?今日はどうだった?
あつし 今日はね、はじめて図書館で本を借りてみたんだ。…見たい?
チロル うん。見たい見たい。
あつし 帰ってから、キキといっしょに三人で見よう?
チロル どんな話があったの?
あつし んーとね、トイレの花子さんの話とか。
チロル へぇ。
ふたり、家に。
二人 ただいまー。
花 おかえり。
あつし 見て見て。あー、キキはいやがるかなぁ。
花 え?なあに?
チロル あっちゃんがね、こわーい話の本、借りてきたんだって。
あつし 図書館で見つけたんだよ。
花 怖い話?
あつし ぼくが読んだのは、花子さんのはなしまで。
チロル 奥から二番目のドアを夜中に…「花子さん、花子さん、あそびましょ」
あつし な〜ぁ〜に〜?
チロル 「花子さん、花子さん、出ておいでっ」
あつし な〜に〜し〜て〜あ〜そ〜ぶぅ〜?
チロル 「なんでもいーーよー」
あつし 首締めあそびだーっ!
三人 うわぁあああっ!
花 最近そういう遊びが流行ってるの?
あつし ちがうよ。花子さんっていうのはね、トイレにいるユーレイなんだよ。
チロル そうそう。それで、いつもあいてない奥から二番目の魔のトイレに住んでて…
あつし あそびましょ、っていうと、首締め遊びをやらされて、ぼくたちもトイレのユーレイにされちゃうんだって!
花
チロル ねえあっちゃん、ほかにはどんなお話があるの?
あつし そのいち。学校編。こつん。こつん。こつん。こつん。
花 どこを歩いてるの?
あつし 夜中の学校だよ。
チロル どこに行くの?
あつし 理科室。
チロル 怖いから、三人で行くことにしようよ。
あつし いいよ。こつん、こつん、こつん、
チロル こつん、こつん、こつん…
花 ざわざわざわざわ…
チロル なに?
花 夜、風に木が揺られてる音。
チロル ざわざわざわ…
花 ひゅ〜〜〜〜ぅ〜〜〜
チロル キキ、それこわいよぅ。
あつし もうちょっとで理科室だよ。
チロル 何が居るの?
あつし わかんないよ。ななふしぎだもん。
花 七つもあるの?こんな怖い話。
あつし あっ!(三人の間をものすごいあいだですり抜けるマッチョな身体!)
花 何!?
あつし 理科室から誰か出ていった!
チロル だって真夜中だよ。学校、だれも、いないよ。
あつし だってさっき…(後ろに人の気配)え?
チロルとキキも気配を感じ、止まる。
ゆっくりと振り向く
三人 ぎゃぁああっ!
あつし 以上、走る人体標本。でしたっ!
花 次は?次は?…学校の七不思議。よるの保健室編。ごそごそごそ、う〜ん、あれ?もう、暗い…
あつし ごーん。ごーん。ごーん。ごーん。ごーん。
花 え?何?もう五時?うそっ、帰らなくちゃ。
チロル ごぉぉおお…ごぉおぉお…
あつし ザー。ごろごろごろピカッ!
花 やだ…大雨。帰らなくちゃ。
チロル か〜え〜さ〜な〜い〜。
花 え?あ…(足を捕まれて)いやぁああっ!
あつし か〜え〜さ〜な〜い〜。
花 きゃぁあああああっ!
あつし そして女の子は手をふりほどいて、必死で家まで逃げました。
チロル ザー。ごろごろごろごろ、ピカッ!ザー。ザー。ザー。
あつし おんなのこはびしょぬえになってしまいました。心配したお母さんが女の子に、「シャワーをあびなさい」といいました。
花 はぁい!よい、しょっと。
あつし そして女の子が蛇口をひねると、
三人 出てきたのは、真っ赤な血でした。
てん、てん、てん…
三人 ぎゃぁああああっつ!
キキ 次は?次は?
チロル 学校の隅にある、どうぶつのお墓のおはなし。
あつし 学校の公邸の隅に、いつもお花が供えてあるところがあります。
キキ そこには毎日、給食の残りものも、そなえられています。
あつし ある日は、パン。ある日は、牛乳。
キキ ある日は、プリン。
チロル おそなえものは、食べてはいけません。
あつし 食べたらどうなるの?
チロル 化け猫が、襲うぞーーーーーっ!!
二人 わーっ!
チロル 食べ物の恨みは怖いぞーーーっ!
二人 わぁああっ!
あっちゃんとチロル、おいかけっこ。
キキ ちょっと、チロル!
チロル どうだ!まいったか!
あつし 降参、降参。
キキ もう、こんなにあばれて。
チロル お供え物は取っちゃだめだぞ!
あつし チロルだって、あぶらあげ。
チロル あ…あれは、いいんだよ!
あつし 狐に呪われるよ?
チロル …そ…そんなことないよっ!本にだって書いてないよ、そんなこと。ほらあ。
キキ 学校の話じゃないのもあるの?
あつし あるよ。えっと、「おうちでのこわいはなし。」
チロル 「真夜中に鏡を見てみよう。〜十年後のじぶん〜」
あつし 「だいじにしなかったおもちゃ。〜おもちゃたちの復讐〜」
チロル うわ。これ、怖いね。
あつし うん。でもぼくは平気だよ。おもちゃ壊したりしてないもん。
チロル そっか。
あつし 「タンスの中には妖怪が住んでる…〜もぞもぞさんとにょろにょろさん〜」
チロル 「幽体離脱。〜魂の糸が切れたら君は生き霊になる!〜」
あつし へぇ…いろんなとこ行けるのは面白そうだね。
チロル 「真夜中のテレビ。〜二度とか戻って来れなくなる〜」
キキ テレビ?
あつし えっとね。「夜中の0時に、テレビの画面をじっと見つめていよう。そうすると、テレビが突然、ピカッ!」
チロル 「それを見てしまったら、もう君はおしまいだ。」
キキ どうなるの?
二人 「きみは、テレビの中の世界を一生さまようことになり、二度と帰って来れないだろう。」
あつし …テレビの中って真っ暗なのかな。
チロル えー?まっくら?
キキ 違うわよ。あの中にはいっつも、綺麗な世界があるじゃないの。
あつし でも、電気消えてるときは、まっくらかもね。
チロル そんなに心配しなくてもだいじょぶだよ、あっちゃん。だって真夜中にテレビなんか見ないもん。
あつし そっか。ぼく、寝ちゃうんだよね。
チロル そうそう。だいじょぶだいじょぶ。
キキ …素敵な世界だと思うのに。
あつし (お母さんに呼ばれ)はーい。ぼくもう寝るね。
キキ おやすみ。あっちゃん。
チロル おやすみー。あっちゃん。ボクも寝ようっと。
キキ おやすみ。チロル。(チロルが眠るのを眺めた後、自分も眠そうな動作。)
と、髪にさわる。
ぼろっ。はらはらはら。
…枯れ始めている。
舞台暗く。
あつし はやくはやくー!
チロル ご、ごめーん!
あつし ちこくしちゃうよー。
チロル 今行く!
キキ ほら二人とも!はやくはやく!…まったく、あわただしいわね。あ、チロル、何時ぐらいに帰ってくる?
チロル えー?わかんない。おさんぽして帰ってくるよ。あっちゃんが学校おわるの、待つんだ。
キキ 夜までには帰ってくる?
チロル そんなのあたりまえだよ。ボク、いい子だもん。いってきまーす。
あつし いってきまーす。
キキ (テレビを見つめている。身体の節々が弱っている。テレビに手を伸ばす。力つきる。また手を伸ばし…)
チロル ただいまー。
キキ あ、おかえり。お散歩はどうだった?
チロル うーん、面白かったのは、ちょうちょと遊んだことくらいかな。
キキ あつし君は?
チロル あっちゃんはお母さんのとこ。あっちゃんも今日体育でいっぱい走ったんだって。ふたりでくたくただよ。
キキ そう。ねえ、チロル、お願いがあるんだけど。
チロル なーに?
キキ 私をもうちょっと、テレビのほうに動かしてくれない?
チロル えー?なんで?…あぁ!今日ちょっとブサイクになったもんね、美容のための日光浴か。もう、しょうがないなぁ。(動かし始める)
キキ …ちょっとムカツクけど…ありがと。
チロル ふぁ〜あ。
キキ チロル、もう寝るの?
チロル うん。今日はいっぱい遊んだから。ごはんもさっきお母さんにもらったし。眠いんだよぅ。
キキ …チロル。
チロル もう、なーに?
キキ 今日はあつしくんと寝たら?
チロル なんで?
キキ たまにはそういうのもいいんじゃない?
チロル …そっか。いいかも。じゃあボク、あっちゃんのところに行って来るね。
キキ うん。…チロル!
チロル ??
キキ …おやすみ。
チロル うん。おやすみ。
キキ あっちゃんにもおやすみって言っておいて。
チロル はぁい。
あっちゃんの部屋。
チロル あっちゃーん。ねてる?
あつし チロル。うん…眠いね。
チロル おやすみ。
あつし うん…
眠り。
あつし (もぞもぞ)
チロル ??あっちゃん?
あつし トイレ行きたくなっちゃったよ。
チロル あ、ボクも。
あつし 一緒に行こう?…うわぁ。じゅういちじ、ごじゅななふんだって。真夜中だよ。ねぇ、なんでチロル、ぼくの部屋にいるの?
チロル あっちゃん気づかなかったんだね。なんかね、キキが、今日はあっちゃんと寝たら?って。
あつし ふぅん。おかしいね。
チロル うん。変なことも頼まれたし。
あつし 変なことって?
チロル キキがあっちゃんに「おやすみ」って言っておいて、だって。あ、あと。
あつし あと?
チロル なんかね、テレビの近くに動かして、って。
あつし なんか、変…
あつし え?
チロル え?
あつし いま、真夜中だよ。
チロル うん。
あつし キキ、もしかして…
チロル もしかすると…
二人 テレビに吸い込まれちゃう!!
チロル どうしよう、一生会えなくなっちゃうよ。
あつし なんで、キキ、そんなこと。
チロル いろんな世界が見てみたいって、前、いってた。
あつし とにかく、止めなきゃ!
チロル うん!
走る。そして。
二人 キキ!
キキ あっちゃん、チロル!なんで…
あつし キキ、行っちゃダメだよ、だってぼくたち…
三人 あ。
音楽。
テレビ空間へ。
地震。
流れ。
大きな波。
はぐれそうになる。手を伸ばす。
不安。
期待。
自由になった手足。見える光の扉の一つに向かって、走り出すキキ。
追いかけるふたり。
(以下、ダンス中台詞)
花 すごい…身体がうごく!あたし、あたし、歩いてる!手が動く!
チロル 流されちゃう…流されちゃうよぉお…あーっ!今、プリンが見えたー!「なめらかプリン、チョコレート味も新登場☆』あ、プリン、待てーっ!
あつし チロルだめだよ!帰れなくなっちゃうよ〜〜!あれ…パパがいつもみてるニュースだ!あっちにはさんねんさんくみ…あ、アンパンマンもいる!ほんとにテレビの中に入っちゃったのかなぁ…帰れないよ〜〜〜〜閉じこめられちゃうよ〜〜〜
花 チロル、あれなにかしら?
チロル ドアだ、ドアが、いっぱい…
あつし 戻ろうよ、二人とも
花 あのドア!
チロル うん!
あつし キキ!
沖縄旅行番組。青い海!
キキ …うわぁ。真っ青な空!すごい、夢みたい!あたし、動ける!うわぁ…こんな空、見たことない!
チロル ボクもこんなにたくさんの水、見たことない。あっちゃん、これ、海ってやつだよね!
あつし (ひとり扉のほうを見て)あ…僕の家が遠くなってく…見えなくなった…
チロル 上の方になんか書いてあるみたい。「夏には沖縄!おすすめスポットご紹介」
キキ すごい…あ、しょっぱい。ん?(背後を気にする)
あつし キキ、チロル…帰れるかな。
花 あつしくん。
チロル あ…あっちゃん、ごめんね。ボクがプリン追っかけたから…っていうか、キキを止めたくて…
あつし …閉じこめられちゃった。
チロル でもここ、真っ暗じゃなかったよ。思ったほどこわそうじゃないよ。ねぇ、あっちゃん…だからさ…
あつし もう、パパにもママにも会えないのかなぁ…ねえ、永遠に、ずっと、出られないのかなぁ…?
チロル 探そうよ、ドア。だいじょぶだよ。きっとボクらの家につながるドア、見つかるよ!
あつし どうやってみつけるのさぁ…
チロル ………
あつし ……………チロルの………ばかっ!
三人 ………。
キキ ねぇあっちゃん、これ、なんだろう?(見えない糸が背後からのびている。)
チロル あれ?ボクにもある。白い、糸みたいなの。
あつし 糸…?あ、チロル、あれだよ!幽体離脱のおはなし!
チロル え…あ、本に書いてあった…
あつし これ、ぼくたちの体につながってるんだよ。
チロル じゃぁ、これを切らなければ帰れるんじゃない?
あつし うん。そうだよ!これをたどっていけば、ぼくたちの家のドア、きっとみつかるんだ!
キキ よかったね、あっちゃん。チロル。
チロル そうと分かれば、遊ぶぞぉっ!
三人 おぅっ!うわぁ…ぁっ!?
と、足下がぐらつきはじめる。
花 『澄んだ青い海。綺麗ですねー。』
チロル 『ほんと、沖縄ならではですねー』
花 『今日は特別にですね、水中カメラをご用意いたしました。沖縄の美しい海の映像、水の中から、ゆっくりとご覧ください。』
花 ちょっ…ちょっと。
チロル 勝手に…からだが…海に近づいてくよ!とまんない、とまんない、うわーん。泳いだことなんかないよー。怖いよー!
あつし カメラが動いてるんだよ。チロル、だいじょぶ。テレビの中だもん。ぼくたちの魂の糸、まだつながってるもん。死んだりしないよ。
チロル だ、だって。だって。塩水だよ。流れてるよ?でっかいよ?深そうだよ?
花 もー、覚悟きめなさいよ。(あっちゃんといっしょに)せーの、
海にダイブ!
海の中のダンス
チロル (あわあわあわあわあわあわ)
花 (こっちこっち!)
あつし (さかなだよ!)
チロル (あっちゃんたすけてーぇ。)
あつし (チロル!ほら、足、ばたばたって。手も動かして)
チロル (あれ?)
花 (できるじゃない!)
そして少しの間泳ぎ…
あつし (あ…あれ!)
三人 (サメだーーーーーっ!)
じたばたする三人。
聞こえてくるのは街の音。
花 びっくりしたぁ。
あつし なんか、ちがうチャンネルみたいだね。ここ。
花 きゃっ!
チロル あっちゃん、ここ、ニンゲンがいっぱい。
あつし さっきみたいに、おいのりしてみようよ。ぼくたちをちがうところに。
三人 ぼくたちを、ちがうところに!
照明FO後すぐFI
聞こえてくるのは川のせせらぎ。
チロル きもちいいー。でもちょっと寒いな。
花 ここもいいわね。風がひんやりして、いいきもち。
あつし ぼくはここ、イヤだよ。
花 なんで?
チロル (あたりを見回していて)キキ、ここ、離れ小嶋だよ。ここにいちゃ、どこにもいけないよ。
花 離れ小嶋じゃなくて、中州っていうの。そうかな。私はここ好きだけど。
チロル やだ。寒いし、遊べないもん。
あつし ぼくもやだ。なんにもないんだもん。
花 わかった。じゃあ、やめにしましょ。…ねえ、今度は、行きたいところを想ってみない?
チロル ここ、テレビの中だよね。
あつし そうだよ。
チロル テレビの神様、テレビの神様、ボクをトトレンジャーのところへつれていけーっ!
トトレンジャーの音楽。
あつし …トトレンジャーだ。
チロル 来たぞ来たぞ、さぁ、トトレンジャーイエロー!君の力を見せてやれ!
花 み、見せてやれ、って言ったって…もーっ!(なんとかかんとかなんとかかんとか)豪華絢爛・トトレンジャーイエロー!
チロル 続いてブルー!
あつし (なんとかかんとかなんとかかんとか)天真爛漫・トトレンジャーブルー!
チロル そして我こそは(なんとかかんとかなんとかかんとか)『 』トトレンジャーホワイト!
チロル よぉおおし!戦うぞ!
あつし こんなのはまだまだ雑魚だぞっ!
花 負けてたまるもんですか!
チロル 見えてきたぞ!
三人 宮殿だ!
戦うダンス
花 ちょっとチロル、今私達、誰と戦ってるわけ?
チロル 悪の根源、ガマガマ大王だよっ!
花 え…ガマ?
あつし 口から吐く毒液に気を付けろー!
チロル 行くぞ!必殺コンボ!
三人 なかよしパワー、発進!
どごぉぉおんっっ!
チロル ついに…倒れたか。
花 地球の平和は、これで守られたわね。
チロル しかし…死んだ恋人を蘇らせようとは…愚かなやつよ。
あつし 花は、散るから美しいものを…
花 …(身体を気にする。糸が、細くなっている)
チロル キキ、どうしたの?(足下ぐるぐる)うわぁ!
あつし …次はどこに行くんだろ??キキ、どこに行きたい?
花 あたし、お祭りに行ってみたい!
チロル おまつり?
花 そう、ブルーハワイ、たべよう?
お祭りの音。
あつし おみこしだー!
花 人が、いっぱい!
チロル つ…つぶされるー!
あつし これ、夏のおまつりじゃないよ。
チロル えー?でも、おいしいものいっぱいありそうだよ。たこやきさん、やきそばさん…
あつし キキにブルーハワイ、食べさせてあげようよ。
チロル そんなの、夏がきたら食べればいいじゃないか〜〜〜
あつし 行くよ、チロル!
チロル え〜〜?
花火の音
花 何?今の音。
あつし 夏、夜に咲く花、なーんだ。
花 夜に?
チロル うわー。すっごい!あー、すぐ消えちゃう。あ、もしかしてあれ?ブルーハワイ、って。
あつし そうそう、だ、でも、お金ないや…
チロル …いいよね?
あつし しーっ!ね。
花 ちょっと、チロル!
チロル去る。
花 まったくもう、チロルったら…
あつし ねぇ、キキ。
花 なあに?あっちゃん。
あつし はなび。
花 花火?…綺麗ね。
あつし キレイだよね。
花 ほんと、一瞬だけど、とってもキレイ。
あつし 朝が来て、夜が来て、それがちょっといっぱい重なったら。
花 え?
あつし キキは…
花 …そうだね。
あつし ずっと、三人で、いたいのに。
花 ダメだよ。あっちゃん。あっちゃんは帰らなくちゃ。
あつし でも…!
花 次にドアを見つけたら、チロルをつれて駆け込んで。後ろは見ないで。きっと、戻れるよ。
あつし (自分の背中から伸びる糸を見て)うん…
花 がんばれ、男の子でしょ?
チロル …一個しか盗めなかったよぅ。
あつし チロル。
花 これが、ブルーハワイ??
チロル うん。キレイだよね!あー。走ったからあっつーい。暑、暑っ…
花 ねぇ、食べても、いい?
チロル えー。キキだけ?
花 三人でわけるわよ。あー冷たっ!
チロル キキ、ちょうだい?
あつし チロル、 キキに食べさせてあげなよ。チロルはまた、ぼくと食べればいいじゃないか。
花 あっちゃん、いいよ。はい、チロルのばん。
チロル ありがと、キキ。うわーっ!冷たっ!キレイー!しゃりしゃりしてる。あれ。でも底のほうはどろどろしてるぞ?
あつし チロル、垂らしてる。
チロル あーっ!。べたべただあ。
花 あっちゃん、それもって。
あつし …ぼくのぶんはもう水だ…
チロル ご、ごめんね、あっちゃん。
花 チロル、はい、こっちむいて。
チロル キキにもかかっちゃったんじゃない?ほら。… あれ?
花 どうしたの?
チロル キキの糸、 なんか、 細い、よ?
あつし (何か言おうとする)
花 そう?気のせい じゃない?
チロル 心配だなぁ。
花 だいじょぶよ。
チロル ねぇ、あっちゃん、帰ろうか?
あつし チロル。
花 (あっちゃんに目配せ)
チロル ん?
あつし ううん、なんでもない。じゃぁ、糸、ひっぱってみようか。
チロル 切れないように、慎重に、だよ。
あつし わかってるよ。
三人、ゆっくりと、糸をたぐり寄せながら闇の中へ。
チロル 暗くなってきたね。
あつし うん。
花 こわく、ない?
あつし 恐くないよっ!だってぼく、男の子だもん。
チロル ボクだって!
花 そっか。たのもしいなー。
ホラーの音楽。
あつし き…きみ、 悪い、ね。
花 なんでこんなに暗いんだろう…?
チロル でも、はやく、かえんなきゃ。糸、こっちに 続いてるもん。
チロル 「こっちにくると、扉が在るぞ」
花 チロル?
チロル ボクじゃないよ!
あつし だって、チロルの声…「扉にはだれも近寄っては いけないぞ」
チロル あっちゃん?
花 やだ、なに、これ。
三人 「魂の糸、切ってやるぞ」
早めのステップ。足音が鳴るように。
あつし テレビの中って やっぱり 恐いとこじゃないかー。
花 行きは よいよい、帰りは恐い、 って感じね。
チロル わぁあ。こらー!近寄る なー!
花 ナイフみたいのが…痛っ!
あつし キキ、だいじょぶ?
花 あっちゃん、いいから、逃げて!
チロル 前が…前が見えないよぅ!
三人 うわっ!
三人の前に、ものすごい風圧。
行く手を阻む。
あつし 先にすすめないよ〜。
三人 『魂の糸、切ってやるぞ』
花 『先に』
チロル 『は』
あつし 『いかせ』
花 『ない』
チロル 『ぞ』
チロル みんな、糸、 しっかり守って!くるよっ!
花 前!
あつし わぁっ! よ、横っ!
チロル 後ろ!いいぞっ!
花 あっ!
チロル なに?
花 向こうでちっちゃく光が揺れてる…
あつし 扉、かなぁ。
チロル 風が…やんでく。
あつし ずぅっと向こうに、ちっちゃい 扉だ…
チロル まって、ボクが いちばん身軽だよ。二人ともまってて。
花 チロル!
チロル え?
横なぎに、花の魂の糸がかき切られる。
あつし キキ!
チロル キキ…?あっちゃん、走ろう!キキ、 立てる?
あつし チロル…
キキ あたしは、いいから。チロル。
チロル ダメだよ、キキ、 扉、そこだよ。ちょっと走ればつくよ。手、かして。ほら、あっちゃんも。
あつし う、うん…
花 あっちゃん。
チロル 走るよ。一生懸命、走るんだ!
走って、走って、 走って、
ドン!と止まる。
あつし 静かに、なったね。
チロル …とびらだ。
あつし ぼくの家だ。
花 ゆらゆら、ゆれてる。あっちゃん、チロル。(あとずさりながら)
チロル キキも、 行こうよ。だいじょぶだよ、糸、切れても。扉見つかったし、あとはこれを開けて、身体に…ほら!帰れるよ!
チロル、 扉を開ける。
吸い込まれるような風。
あっちゃんとチロルは吸い込まれるがままに。花は…
花 お願い、やめて。枯れちゃう、枯れてっちゃう…息が…できない、チロル放して、放して!チロル、放して!
チロル いやだ、三人で一緒に帰るんだ!
あつし チロル!
チロルと花の、繋いだ手をむりやりひきはがす。
花 (天気予報を読み上げ続ける)
チロル なんで、なんで だよ、あっちゃん!三人で一緒に帰るのに。キキを連れ戻すためにきたのに。あっ ちゃんだってそうでしょ?
あつし チロル、キキは、もう、ぼくたちの世界では生きていられないんだよ。
チロル どうして。
あつし 花って、すぐかれちゃうんだよ。チロル。チロルは、まだ花が枯れるとこ、見てないんだよね。知らないんだよね。でもそうなんだ。枯れちゃうんだ。キレイだった桜も散って、真っ青な空が見えるころ、夏になったら、キキはもういないんだ。
チロル ちょっとだっていったじゃないか。三人でブルーハワイ、たべようって。
あつし ぼくたちにはちょっとでも。キキにとってはいっぱいだったんだよ。チロル。
チロル もう、会えないの…なんて、嫌だ!
あつし さよならなんだよ、チロル!
離れていく二人と、花。
チロル キキ!
花 (すこしほほえんで。聞き取れない声で。「また、あおうね!」)
普段通りの室内。
ただ、あの黄色い花だけが、花びらが落ち、朽ち果てている。
キキの声は、もう、聞こえない。
チロル あっちゃん…なんで…
あつし キキ…。
チロル え?
あつし さいご、キキのこと、みてた?
チロル え?よく、わかんないよ。ぜんぶ、夢、なのかなぁ?
あつし (部屋の片隅の朽ちた花に触れて)もう…なんにも、聞こえないよ。ねぇ、でも、チロル、
チロル ?
あつし キキ、さいごに、わらってたんだ。
チロル 笑って…た?
あつし うん。 笑ってた。
チロル …キキが?
あつし うん。
チロル (朽ちた花に触れ)ねぇ、キキ、キキ…?キ…
ふたり、砂嵐の狭間に何かの声を聞く。
あつし 声。
チロル ねぇ、いつかまた、さ。
あつし うん。
チロル テレビのなかに入ったら。
あつし うん。
チロル キキに、あえるかな。
あつし うん。
チロル 一チャンネル、NHK朝のニュース。
あつし 三チャンネル、みんなのうた
チロル 四チャンネルズームイン朝
あつし 六チャンネル連続ドラマ
チロル 七チャンネル砂嵐
あつし 八チャンネルアニメ
チロル 九チャンネル 宝塚
あつし 十チャンネルバラエティ
チロル 十二チャンネルクイズ番組
あつし 一チャンネル、三チャンネル、四チャンネル、六チャンネル、七チャンネル、八チャンネル、九チャンネル、十チャンネル、十二チャンネル。一チャンネル、三チャンネル、四チャンネル、六チャンネル、七チャンネル、八チャンネル、九チャンネル、十チャンネル、十二チャンネル。一チャンネル、三チャンネル、四チャンネル、六チャンネル、七チャンネル、八チャンネル、九チャンネル、十チャンネル、十二チャンネル。
時が経ち…
あつし いってきまーす。
チロル 朝ごはん昼ご飯夜ご飯。いろんな番組。朝のニュース、夕方のアニメ。夜のバラエティ。夏が来て、冬が来て、桜が、さいて。そんなのを繰り返すうちに、あっちゃんは中学生になった。もう…
あつし じゃーな、チロル。(時計を見て)おっと、ヤバい。ヤバいって。 いってきまーす。
チロル もう、ぼくとおはなしをすることも、ない。
チロル あれからぼくらはテレビに入ったことはない。あっちゃんと試したこともあったけど、テレビは光ったりしなかった。ちっちゃいころのただの夢、だったのかもしれない。でも、この中にあのころのぼくらはまだ、鮮やかに、とんだりはねたり笑ったりしてる。もうずっと、とんだり、はねたり。してないな。もうずっと、あっちゃんと、しゃべってないな。そんなとき、ぼくは走査線の間から、きみの想い出をすくい上げる。朝が来て、夜が来て。そう、こんな 月もないような夜、ふと淋しく なったとき…
あっちゃんやってくる。
チロル あっちゃん。
あつし おっと。しっぽ踏んじまうって。チロル。
チロル 夜更かしはいけないぞ!もう真夜中だよ。
あつし もうネコにしたらトシだろ。夜くらい寝ろって…ん?
あつし ビデオ?なんだろ?
あっちゃん、 ビデオを差し込もうと画面を見て…
AN APPLE A DAYが鳴り響く。
チロル あ…あっちゃん!?
あつし チロル!?
ふたり、後ろを振り返ると、
花 (笑って小さく手を振って立っている)
チロル そうしてぼくは、走査線の間から、きみの想い出をすくい上げる。淋しいとき、だれも、助けてなんかくれないとき。救うのは神様じゃなくて。ぼくがじぶんですくい上げる、鮮やかな想い出。夢でもいいよ、マボロシでも、ニセモノでもいいよ。この不思議な箱の中で、今夜は遊ぼう!
チロル キキ。
花 うん。
チロル あっちゃん。
あつし うん。
チロル 冒険の、始まりだ!
三人 おぅ!
(幕)
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