| *Dear..................... |
Dear・・・
少女(声1、かおり) 女(声2、あや) 男(やすえ)
金森あずさ(雪子先生)
大沢英美(えみ)
舞台上手はじに勉強机、その上には一冊のノート。そこが英美を映す空間である。
英美 あたしが悪いの・・・全部・・・あたしが悪いの・・・・・・。
英美の照明消え、下手に
あずさ 金森あずさです。今回の劇でピンチヒッターの演出やります。ほんとうは、この劇をやるかどうか、わたしたちすごく迷いました。なぜかというと・・・。きっと本当の演出は、お客さんの前でこんなこというと、きっと怒ると思うから、いいませんね。 私達・・・「4人」・・・の劇、どうぞお楽しみ下さい。(行きかけて)もし本当の演出が、英美がここにきたら、「もういいんだ」って、言ってあげて下さい。
暗転 下手に ぼろぼろの格好の武士らしき男。雨風が激しい。
男 どれだけ時をさまよおうとも、おまえの影は薄れはしない。全ての記憶を失おうとも、おまえの声は未だ響く。・・・もう、声はでない。のどはかれ、全ては乾き、それでもおまえは呼ぶのか。この俺を呼ぶのか!
雷 上手に
女 化学・文明・進化、全ては欲の塊である。・・・人間は、なんのために生きているの。おまえらは!そこまでして生き延びたいか!
中央に
少女 さやかー!!
暗転 明るい音楽 照明がつくと、そこは屋上。女が隅に横たわっている。ノートを手に少女登場
少女 「わたし、ついていくわ!」「だめだよ」「なぜなの?」「ぼくだって!」抱き合う2人。そして男はフィリピンへと旅立っていった。「ごめんよ、たまこ。3年待っていておくれ」しかし女はそこまで男のことを好きではなかった。すぐに立ち直った彼女は、「愛する二人 別れる二人」でデビ夫人にまけないトークを展開。ついには歌手デビューまで果たし、輝かしい栄光をつかんだのだった。その頃たかしは、フィリピンでバナナの食い過ぎのため危篤状態、結局いい医者など来るはずもなく、死んでしまったということだ。男を選ぶときは慎重に、という教訓であろう。・・・・・。あたし才能ないかもー!!やっぱ小説ってむずかしいわ。あ、今「小説だったのか」ってつっこんだそこのあなた!そーんな乏しい感受性じゃぁ演劇部とはぁいえねぇなぁ。もっとこうおおらかに・・・(女に気づいて)みーーーーたーーーーーなーーーー。わかってるわよ、どうせ鹿みたいって思ったんでしょ。(酔って)ふっ、そうよね。一人で自分で書いた小説よみあげて、つっこんでもいない客に「つっこんだわね」ってつっこんで。ホントさむい奴って思ったでしょうね・・・・。でもね、これだけは信じてほしいの。(キラキラと)私、本気で小説かいていこうっておもってるんだ!無理だって?くすっ、わかってるわよ、たかしくん。でもがんばる!あたし・・・あたしねっ、たかしくんのこと、ずっと・・・ずっとすきだった!
もちろん女は倒れたまま、反応なし。
少女 あの・・・ですね、こういう寒いことした後に無視されちゃうと・・・。雪山通り越して、もうこれ、なんか、・・・・普通に恥ずかしいんですけど。
女に近づいて様子をうかがう。動かない。
少女 こほん。(小学校の先生調で)「はーい、みんなぁ、けがをしたりぃ、動けないお友達にはぁ、すすんで手を貸してあげましょう。」・・・・・手。
(とさしだしたが、おきあがるはずもない。)ゆきこせんせーい!
雪子先生 はーーーーいっ!(飛んでくる)
少女 今「なんでやねん」ってつっこんだそこのあなた!そんな感受性じゃぁ、演劇部なんてとてもとても・・・。
雪子先生ごっついせきばらい。不機嫌。
少女 あっ、す、すいません。そうですよね。あたすぃ、しゃべりすぎ?ちょっとこれワンパターンだしねっ、あはっ。
雪子先生足を踏みならす。さらに不機嫌。
少女 あっ「しあわせなら足ならそ」ってねっ、あはっ。
雪子先生さらににらみをきかせる。相当不機嫌。
少女 ・・・(小さい声で)せんせい、このひと・・・・・。
雪子先生 あらぁっ!(うれしい)
少女 どっどうしたのかなぁっ。
雪子先生 死んじゃったのね。
少女 あっなーんだ、死んじゃってんのか。そっか、どうりでねぇ。もう、やっだ。あっはっはっは、死んで・・・・るってかぁ!?
雪子先生 はい、じゃぁお当番さん。
少女 (のせられて)せんせい、さようなら。
雪子先生 はい、さようならーーーー。(飛び去る)
少女 (まだやってる)みなさんさよおな・・・しまったー!!くっそぉのせられた!いや、それよりどうしよう!ホントに死んでるのかなぁ!はっ、でもまてよ!ここは屋上・・・。ここから落とせば自 殺ってことにならないか?あ、でも死亡推定時刻が・・・。ってあ゛ーーー!なに考えてんだあたしはぁっ。別にあたしが殺した訳じゃないじゃんっ。でも第一発見者が犯人ってありがちじゃない!?どうしようーーー。おちつけぇ、落ち着け私。(落ち着いて)まっまず、本当に死んでるのかどうか確かめなきゃ・・・。
少女、女を中央まで引っ張ってくる。と、足音。
少女 だん、だん、だん・・・。あの、これって足音ってやつじゃないですか?・・・・・だよねぇ!?ちょっとまて、ちょっっとまて、ちょっとまていい!!今のこのあたしのたいせいって・・・ひっじょーにまずいんじゃない!?
足音はやくなる。
少女 だだだだぁ!?ちょっとまっ・・・・えーいっめんどくさい!木になろう!はぁっ!
木になった少女。男登場
男 (周りを見回しながら)なにか声がしたかと思ったが・・・・気のせいか。ん・・・?(少女をじっと見る。)
少女 ・・・・ 木・・・です。
男 なんだ木か。(視線をはずす)
少女 (客に)今「おいおい、なっとくしちゃうのかよ」っておもったやついるでしょー。甘いなぁ、ホント。みた?やっぱ演技力っつーの?それが・・・・
(男と目が合い)あ゛。
男 (少女を追いつめ)おのれぇっ!何処に隠れておった、このくのいちめ!
少女 はぁ!?ちょっとまってよ、あ!なによそれ(刀)!ずるいぞ、武器持ちなんて・・じゃないや!火器銃刀法違反でしょぉ!?きゃーー!!助けてー!
と、男、手を離す。
少女 あっ!?あれ?・・・な、なによ・・。
男 うるさい女だ。
少女 なんだとぉっ。
男 本当は城に入るなど打ち首のところを救ってやったのだ。ありがたく思え。
少女 城?なーんで私がお礼言わなきゃなんないのよ。
男 ここでなにをしていた。
少女 ギク。あっ、違う違う、ギクじゃない!あたしは殺してない!
男 殺す・・・?
少女 ああああっ!ちがうぅ!そうじゃなくてっ!
男 動揺しているな・・。
少女 ちがううう!!(思いっきり身振り手振り)そうじゃなくてっ、この・・そのっ・・・・。
男 なるほど。三角関係のもつれからもう愛人として生きるのがいやになり、勢い余って殺してしまったというのだな。
少女 そうなんです・・・。奥さんの目を盗んで彼と会う毎日・・・。それはそれで楽しかった!・・・でも、もういやなの!100カラットのダイヤ、1万本のバラ、ミンクのコート、シャネルの香水、彼からはたくさんもらったわ。・・・彼の愛以外は・・・。200カラットのダイヤやシャネルの・・え?なに?ちがうわ!自慢してるわけじゃないのよ300カラットのダイヤなんて、べつにたいしたことないでしょう、たかが400カラットよ。え?なに?ふえてる?そんなことないわ、わたしちゃんと500っていったわよね?え?なに?そんなのあるのかって?あるにきまってるでしょう!ほらここに・・・(自分の手を見る)ビーズー!?
男 ちゃんちゃん。
少女 ありがとうございましたー、ってやらせんなぁっ!
男 (まじめに)趣味なのか?
少女 そうなの・・・振られるとついつい勝手に・・・ってちがうにきまってんでしょ!!
男 やはり趣味なのか。
少女 だからぁ。
男 しかし好きなのだろう。
少女 うん・・ちょっと・・ぽっ、ってやらすなぁ!
男 やはりな。
少女 変なきき方するからでしょ・・・?あたしは!ただこのひとを・・・
男 何?おお、こんな所にもう一人。
少女 気づいてなかったのか・・・。
女 むにゃ・・・なに・・・うるさい・・・。(おきあがる)
少女 でたーーーーーーーー!!
男 うるさい女だ。
女 ふあぁーぁ、よく寝た。
少女 ね・・・ねてたのか・・・・。
英美へ(ここの切り替えは各自工夫して下さい)
英美 10月26日、部室日記より。脚本を書き始める。自分で演出までできるなんて夢のようだ!今日は石井さんと電話でたくさんお話をした。かっこ、石井さんとは私がよく見に行く劇団のお兄さんなのだ。クラスではあきらのことが好きってことになってるけど、実は石井さんの方がずっとかっこいいと思う。かっことじ。私もはやく大人になりたいな。
先ほどのシーンへ
少女 ね・・・ねてたのか・・・・。
女 なによ、ねてちゃいけないってか?
少女 いやいや別にそうは言ってないけど。っていうか、寝てた方がいいんだけど・・・・。はーっ・・・だって死んでるかと思ったんだもん、なんか気ぃぬけたぁー・・・。
と、女と少女の前にギラッと刀。
女・少女 ひえぇぇぇぇっ!!??
男 おまえ達が一体何故にここにいるかはしらんが、ここは我が城。出て行かぬと言うなら少々手荒なまねも覚悟してもらおう。
女 てっ手荒なまねって。
少女 ちょ、ちょっとまってよ!おちつこうよ、ね、ねっ!整理して考えよう、整理して。
男 整理だと?
少女 そう、じゃまず疑問1ね。
男 ふん・・・。
少女 さっきもなんかいってたけどさ、・・・なんでここがあなたの城なわけ?
男 わけなどない。
少女 ・・・・・。まっまぁいいや。次、疑問2ね、これすっごい気になってるんだけど・・・・何で刀もってんの?そんでもってそのかっこ何!?
男 この格好が・・・どうかしたか。
女 それ普段着ですか。
男 普段着・・・?まぁひごろから着てはいるが・・・。
少女・女 ださっ。(ひく)
男 なっ・・だ・・・ださ・・・?
女 しかもなんかにおいません?
男 む・・そうか?近頃風呂などはいってないからな。
女 ち・・近頃って。・・・どれくらい?
男 一年になるか・・・、覚えとらんな・・・。
女 いっ、一ねん?!一年もお風呂はいってないの!?
男 あっいやいや
女 あっちがうんだ、そうよね、あーびっくりした。もう少しでサクランボの枝、舌で結べちゃうところだった。危ないわぁ。
男 去年の秋口からなら一年半ほどだろうな。
女 いやーーーーーーーー!!
少女 まぁ、もういいですから。
女 いいの!?ねぇそれっていいの!?世界平和がーーーーー!!
少女 わけわかんないなぁ。とりあえず私これからここで小説かきますんで、お二人とも出ていって下さい。
男 小説とは書物のことだろう。
少女 え?あぁ、そうそう書物。
女 それなら別にここじゃなくたって
男 たしかに。別の場所でも書けるであろうが。
女 そうよねー。
少女 (大声で)ダメなのよ、ここでなくちゃ!
間
少女 とっとにかく、あたしはでていかないから。(女に)あなたこそ、ただ寝っころがってるだけなら何処だっていいじゃない。
女 ふっ、あなたたち、私がただねっころがってるだけにみえた?
男・少女 みえました。
女 ・・・。
少女 どうみてもいそがしそうにはみえなかったわよねー。
女 そう・・よね・・・。(臭い芝居)ねっころがってるだけ・・・。どこだって・・・。
少女 な、なによ・・・。
女 あたし・・・居場所ないの・・・。
少女 え・・・?
女 小さい頃、私はニューヨークの施設の前に捨てられた。(悲しい音楽)それから私・・・いつも一人。この、人より秀でた容貌。たぐいまれなる才能。仕方がないのね、「美人薄命」。
少女 あの、それって・・。
女 あたしにはかえる場所なんかない!そう・・またここでも私は追い出されるのね・・・。(ぶたれる)・・・あっ・・・あんっ・・・ひどい・・・。(くずれおちる)寒い・・・寒いわっ・・・。
少女 お前がな。
女 「夜風が身にしみるぜ」「お待ち下さい、お侍さん!」「お嬢さん、俺なんかにゃぁ、ほれちゃいけねぇ」「せめてお名前だけでも」「あばよ」「なんて男らしいの!」・・・・つかれちゃった・・。なんでついつい笑いをとろうとしちゃうの、弱虫!(自分をぶつ)こんな自分は、疲れちゃったよ・・・。(死ぬ)
少女 死んだ。
男 そのようだな・・・。しかしこの女も趣味が変わっているな・・・。
少女 「も」ってもしかして私もはいってんの?
男 好きなのだろう?
少女 うん、実は・・・ぽっ。だからやらせんなっつの(男につっこむ)
男 (過敏な反応)何をする貴様ぁっ!
少女 きゃっ!なっなにって・・。嫌だった?ごめんなさい・・・。
男 ・・・もうでていってくれ。
少女 い・・・いやよ!それだけは私も譲れない。
女 (おきあがって)ちょっとあんたたち・・・。
少女 うわぁっ!び・・・びっくりした・・・。
女 む・・・無視しないでくれる?
少女 だ、だってさっきから聞いてりゃなんかさぁ・・・。
女 ほんとなのよ・・・。
少女 え・・・。
女 ほら、あたし、こういう性格だからさっ・・・つい・・・茶化しちゃっりして・・・。ごめんなさい。でもほんとなの。信じてもらえないかもしれないけど、ホントに、本当に行くとこないの。あたし・・・どうすればいい?(泣き崩れる)
少女 えっ、ちょ・・あのっ・・・。いや・・ごめんなさいっ、あたしこそ、なんか・・。
女 あたし・・・ここにいても・・・いいんですか・・・?
少女 え?
女 だめですよねーーーーーーー!(大泣き)
少女 え!?いやっ
男 ここにいろ。
少女 え!?
女 ・・・いいんですか。
男 男に二言はない。
女 ありがとう・・・・。でも・・・・(少女の方を見る)
少女 ・・・・・わかった!わかったわよ、みんなここにいればいいじゃない
。
女 (ころっと態度が変わって)あら、そーおー?じゃ、あたしこーこ!
と、ど真ん中に寝っころがる女。
少女 あーーーーーーっ!!もうーっ、なんなのよーっ!(男に)あなたのせいなんだからねっ。
男 いいのだ。
少女 はい?
男 女の涙ほど弱いものはない。
少女 何かっこいいこといってんのよ。はい!ちょっと立って!ジャンケンよ、ジャンケン!
女 はぁ?
少女 場所決めすんの!みんなここにいるんでしょ?
女 ・・・ほんとにいていいの?
少女 出ていくの?
女 いやいや!とんでもない!ここにいる!
少女 じゃあ、ジャンケンね。
男・女 ちょっと待て。
少女 なに。
男 ジャンケンとはなんだ。
少女 は?
女 なんでいまどきそんなレトロなのよ。
少女 はぁ?
男・女 だから・・
少女 ちょっと待て!なんかいっぺんにしゃべんないでよ。じゃぁまず!あなた(男) は?なんだって?
男 ジャンケンとはなんだ。
少女 あー、はいはい。
男 何か新手の武術か何かか。
少女 「ぶじゅつ」?ちがう、ちがう!だからこう、「ジャンケン・・」って。・・・ホントに知らない の?
男 知らぬ。(はっとして)貴様!俺のことを疑うのか!
少女 そういうわけじゃないけど。ねぇ、ずっと気になってたんだけどさ、いいかげん・・なんつーのかな、古い男のふりっていうの?やめてよ、それ。コスプレも度が過ぎるとあれだよ。
男 こす・・・ぷれ?
女 ちょっとぉ、いつになったら私の番が来るのよぉ。
少女 あーもう、何。
女 とりあえず。私ら若いんだしさ、古いことはやめよう。
少女 古いこと?ジャンケンが?
女 今そんなことする人いないでしょ。
少女 だってジャンケンは流行じゃないでしょー?
男 ちょっと待て、「こすぷれ」とは一体・・・。
少女 ジャンケンじゃなかったらどうやって決め事すんのよ。
男 だからジャンケンとは・・・。
女 確かにそのだささがいいといえばいいけど。
男 じゃ、じゃん?
少女 ジャンケンはジャンケンでしょ、コスプレはコスプレ!
男 こ・・・。
女 だいたいグー、チョキパーって
男 ちょき・・・。
少女 なんでそこに着目するかなぁ。
少女と女、かみ合わない言い合い。
男 じゃん・・・ぐー・・こす・・・。・・・・。だからそれは一体何なんだ!(と、きれる)
女・少女 (さらに大声)うるさい!!
男 はい。
少女 あ゛ーーーーっ、もーわっけわかんない!
女 つかれたー。
男 なんで俺が女に怒鳴られにゃならんのだ。
少女・女 女性差別。
男 悪かった。
女 ったく、あったまふっるいんだから。
少女 もー、とにかくジャンケンしようよー。ここで三人固まってたら先に進まない!
男 しようにも、それが何か俺は知らぬ故・・・。
女 あたしはしたくなーい。
少女 ・・・・本気?
女 何が?
少女 (男に)ホントにわかんないのね?
男 まだ疑うか!
少女 違うから!違うから、落ち着こう。(女に)ホントに古いと思うのね?
女 おもう。ふるい。ふーるーいー!
少女 あんたたちおかしい!!
女 なっ、失礼ねー。
男 聞き捨てならんな・・・。
少女 はい、落ち着こう!今の時代ジャンケンにけちつける人なんていないわよ、うちのおじいちゃんでさえ納得してるのに。よーーーーーーーーっく周りを見てみれば?あんた達みたいな人ぜーーーーったいいないから。ほら、ほら!
男と女、しぶしぶながら、多少嫌みに周りを見回す。
と、男いきなりフェンスにかけ寄り、さらにじーっと見る。普通ではない。
女、しばらくは普通に見ていたが、やがて目を凝らすように見始める。
少女 ほら、わかったでしょ。じゃぁじゃんけん、ジャンケン!(客に)なんでそんなにこだわるのかって?ジャンケン好きだからに決まってんじゃない、私これ強いんだよねー。・・・・ちょっと?おーい、お二人さーん?
男 何だ・・・・これは・・・・。
女 え?
男 どこだ!!どこだここは!俺の家は、村は城は、どこへいっちまったんだ!?
少女 ちょ、ちょっと?
男 (少女の肩をつかんで)教えてくれ、これは・・・ここは一体!
少女 やだっ、ちょっ、ちょっと離してよ!何なのよ一体!
男 (呼び求めるように)せつ!せつ!!
少女 だ・・・大丈夫・・?あなた。
女 教えて。
少女 え?
女 これは・・・私の町じゃないわ。よく似てるけど、全然違うの!お願い、教えて。ここは一体・・・一体ここはどこなの!?
少女 ・・・・ねっねー、一体どうしちゃったの?いきなりこわい顔して、そんな「ここどこ」とかいわれたって。(二人に見つめられて)ど・・・どこって・・。2000年の・・桜町・・だけど。
英美へ移る。
英美 10月29日。私は石井さんのことが好きなのかもしれない。憧れじゃなくて、本当に。その事をあずさに話したら、うなずいてくれて、なんだかうれしかった。どうせダメもとなんだから、今度あえたとき告白できたらな、と思う。台本の方も、まぁまぁのってかけている。授業中も原稿にむかっているなんて、文化祭前をちょっと思い出した。
さっきのシーンへ
少女 2000年の、桜町・・・だけど。
女 二千・・・年・・。(ぺたっと座り込む)
少女 ねぇ、それがどうかしたの?
男 ・・・どういうことだ?2000年だと!?なぜ!なぜ!!
少女 ねぇ!ねぇなんなの!?
女 ・・・あたしは、2100年に生まれたの。
少女 え・・・え!?な・何それ
男 今は、1629年のはずなんだ。
少女 ちがうってば、いまは2000ねんなのよ・・・え・1629?
男 忘れもしないキリシタンの処刑があった、その次の年のはずだ!
女 タイム・・・スリップ・・・。
少女 え?
女 ほんとにあるんだ、そんなの・・・。
少女 ちょ、ちょっとまってよ、タイムスリップ?・・・・・・あなたは今から100年以上も未来の人で、この人はそれよりもずーっと・・・昔の人?
女 私にも・・・よくはわからない。でも・・・。
男 (改めて周りを見回しながら)本当にここは、2000年なのか・・・
。
女 おそらくね。本当の未来の世界。私にとっては過去の世界だけど。
男 これが・・・未来。
少女 いいかげんにしてよ!!そんな夢みたいな話信じられる?私のことはめようとしてるんならさっさと帰って。(ドアを開けようとするが)
女 無駄よ
少女 え?
女 開かないの。あなた達が来る前さんざん出ようとしたけど無駄でした。
少女 そんな・・そんなわけないじゃない!だって私は、そうよ、この人だって、階段昇ってここまでやってきたのよ?
男 (宙を見つめて)その階段は、果てしなく続いていた。昇っているのか降りているのか、それさえもわからず俺は走っていた。それが階段だったのかもわからなくなった頃、ここの光を見た。
少女 ・・・。信じられない。
女 なにが?
少女 まずこの人はいいとする。いや、良くはないんだけど、でもまぁ、昔の人って聞いてある程度納得できるところがある。
女 じゃぁいいじゃない。
少女 問題はあんたなのよ。
女 何よ。
少女 今から100年以上も未来の人なんだよね?
女 そうよ、私の「今」は2121年。
少女 ほらおかしい!
女 どこが?
少女 だってずーっと未来の人なのに、格好だって今の人と全然変わらないし、言葉だって何だって全然同じ。それに100年も昔のこの町を見ても、全然珍しがったりしないじゃない。
女 未来っぽくないと。
少女 そうよ。
女 もしかしてこういうの想像してる?「うわぁー、あっあれが車かぁ。今は空飛ぶ車しか見ないからなぁ。あっあれが犬!?僕はじめてみたよ、ロボットじゃない犬なんて!こんな町、歴史の教科書見てるみたいだぁー。」
少女 多少違うけど。
女 でも未来人ってこういうイメージなんでしょ?
少女 まぁね、だってあなた普通すぎるんだもん。
女 失礼ね。未来はそれほど進んでいなかった、ただそれだけの話でしょ。
少女 にしたって。
女 じゃぁ未来の話をしてあげる。
少女 未来の話?
女 (独り言のように)きっと私がここへ来た原因はそこにあるのよ。
少女 え?
女 2100年、私は日本という国に生まれた。2000年から全ての人が夢見ていたように、日本の科学は進み、都市は発達しました。その町は、まるで夢の世界。本当に車が空を飛び、ロボットやアンドロイドが大量生産され、日本は世界有数の先進国!その世界こそ、人々が昔から描いていた未来だった。・・・そう、私の歴史の教科書に書かれていました。わかりますか?その町は、一瞬の幻で消え去ったのです。残ったのは、地球の復讐でした。温暖化、大気汚染、それまで隠していた夢の未来の仮面は剥がれ、私達に与えられたのは・・・一つのビルでした。もう日本という国には、外の自然と共存する自由さえも許されてはいなかったのです(間)そこから人間達は、必死で復興を目指し、もう一度外の世界で暮らせるようになった、それが2100年、私の生まれた年です。私が物心ついた頃、町は既に、この町、2000年の風景と、何ら変わりありませんでした。あの、すばらしい世界は消えてしまったけれど、そこには過去の過ちを認め、償おうとする人々がいました。平和でした。・・・。(黙ってしまう)
少女 ・・・どうしたの?
女 あなたは今、私の話を何の疑問も持たずに聞いているけれど、一度失ったものは、二度とかえってこないのよ?
少女 え・・・。
女 死んだ町を元に戻すために何の犠牲もはらわずにすんだと思う?
少女 ・・・。
女 たくさんの人が死んでいった・・・。私の父もそうよ。でも、私の明日を思って死んでいったんだから、私はその分幸せになろうって思ってきた。だから何かのために犠牲が必要だって事はわかってるつもりだった。わかってる!・・・つもりだった。でも・・・。
少女 でも・・・?
女 でも・・・。・・・・。やめた。
少女 えぇ!?ちょっとぉっ。
女 やめやめ、なーんか暗くなっちゃってだめよねぇ。
少女 ・・・。
英美に移る。
英美 10月30日、市民会館のいつもの椅子の所。石井さんに好きっていったら、子供扱いしないで話を聞いてくれた。つまりそれは・・・・・、私の気持ちに応えてくれたって事!!とーってもうれしい!!幸せだ!
戻る
女 あっそういえばさ、あなたは?なんで自分がここに来ちゃったのかー・・・・とか、心当たりない の?
男 ・・・・。
女 さっき、なんかキリシタンがどうとかいってなかった?もしかしてキリシタン?迫害されてた?
少女 ちょっと・・・。
男 イエス様の教えは正しかったのか。
少女 え?
女 話して・・・くれないの?
男 話す気はない。
女 そか。
間
女 もし・・・
少女 え?
女 ねぇ、もし元に戻れなかったらどうする?
男 ・・・・。
女 でもさぁ、ここの方が、ずっとましだよね。
男 ・・・ああ。
少女 そっそうかなぁっ。
女 え?
少女 そんなにいいところかなぁ、ここ。そりゃ、二人だって大変なのはわかるけど、うらやましがらないでよ。毎日変な事件だっておこるし、子供だってのにみんな塾とかいっててね、それに・・・
女 そういえば聞いてなかったね。
少女 え?
女 なんでここでなきゃだめなの?小説。
場面、英美に移る。
英美 10月31日、石井さんと初めてキスをした。なんだか考えていたのより、ずっと冷たい、生っぽい感じがした。夜、石井さんが公園でほかの女の人とキスをしているのを見た。
場面戻る
女 なんでここでなきゃだめなの?小説。
少女 ・・・。
女 まぁ、それ言っちゃぁなんで私達ここから出られないのかって感じだけどぉ、
少女 (わざと軽く)友だちのかわり。
女 え?
少女 しりあいにね、小説家になるのが夢だった子がいて。でもその子、死んじゃったんだよね。その子がすきな場所だったから、なんとなく。私もここならその子みたいにうまく書けるんじゃないかなーって。でもホントまいっちゃうんだよね、小説ってホント難しくてさ、全然うまくいかないの。
男 (ノートを広げて)これか。
少女 あっ、何勝手に見てんのよ!
女 (のぞいて)相当才能ないわね・・・。
少女 (とりかえして)余計なお世話。
場面英美へ
英美 11月3日。石井さんが私のことを殴った。ほっぺたに大きなあざができた。きっと仕事がうまくいかなくて大変なんだろう。なんで私が殴られるのかわからなかったけど、石井さんは私に「愛してる」って言うし、二人だけの秘密だっていったから、あずさにもお母さんにも秘密にしようと思う。二人だけの秘密がなんだかうれしい。
場面戻る
女 あぁ、でもこれ、おもしろいよ。
少女 ホント!?
女 うん。才能あるんじゃないかな、この子。
少女 この子って?
女 だってあなたが書いたんじゃないでしょ?
少女 なんでわかんの?
女 誰だってわかるでしょ。
少女 どういう意味よ。
女 別に。
少女 ・・・そっかぁ。
女 何。
少女 才能あるか。
女 いや、だからあんだじゃなくて・・・・。
少女 さやかは病気だったの。
女 え・・・。
少女 小さい頃から文章書くのが上手だった、ずっとともだちだった!でも・・・。
回想
少女 さやか、来たよ。あー、もうまた無理してる。ちゃんとねてなってぇ。あ、これ新作?「メモ取るだけ」って、それもあたしがやるから。さやかは病気だった。既に鉛筆を握ることさえ困難な状態だった。だから私は、さやかの手になろうと思った。「・・・だからなの」っと。はい、次は?え?うそ、どこまちがってる?えー?うそー。さやか「だから」って言ってたよー。あー、わかった、わかった。で?何?毎日放課後はさやかの所に行った。さやかの心からわき出る私には想像もつかないストーリーを原稿用紙に書き写した。何枚も、何枚も・・・。屋上?出ていいって?本当に!?わかった、じゃあ明日行こう!絶対早く来る!小説の方ももうすぐ完成だしねっ。え・・・明日までって。無理することないよ。・・・・わかった。じゃぁ、完成記念ね、3時に来る!「3時に来る」、そういったのに、私は約束を破った。その日はいつもよりホームルームが長引いて、結局病院に着いたときには4時を過ぎていた。ごめん、さやか!・・さやか?あ、おじさん、おばさんこんにちは!あの、さやかは・・・え・・・?その日は、さやかが手術を受ける日だった。成功する可能性は0に等しかったという。だけどどうせすぐに死ぬんなら、そのわずかな可能性にかけたい、両親の希望でその手術は行われることになっていた。・・・さやかは、自分が死ぬかもしれないことを知っていてか、私が来るはずの3時まで、オペ室に行くのをいやがったそうだ。私が来るはずの・・・3時まで。
場面英美へ
英美 11月4日。台本の方はいよいよ佳境に入った感じ。でも実はこの少女の回想シーン、ひとりでひっぱるのはどうなんだろうと悩んでいる。明日あずさに聞いてみよう。石井さんは最近私のことをよく殴る。・・・好きってことは、なぐられる・・ことなの・・?でもきっときっと、石井さんは私のことが好きなんだよ。失ってしまうぐらいなら、ずっと殴られていたい。痛いけど、痛覚がなくなっちゃったらいい。そしたらもっと、石井さんの愛をもらえるのに。
場面戻る
少女 でも3時になっても私は来なくて、結局その小説は完結してないんだ。
女 それで・・・。
少女 あたしがなんとかつなげないかなって。でも無理だよねぇ、小説なんて。読んだこともないのに。
男 憎いのか?
少女 え・・?
男 憎んでいるのか。
少女 ・・・・。
女 私は憎いよ。
少女 え?
女 恨んでる。殺したい。死にたい。(男に)あなたは?
男 もう道は捨てた。俺は、今人を殺すことができる。自分の命を、なげることができる。
少女 それって・・・。
男 俺は憎い、全てが憎い。・・・・せつ・・。
独白
男 俺とせつは、いわゆるキリシタンだった。近く、キリシタンの処刑がある・・・俺達にあるのは、忍耐の日々だった。だが、そんな日々のことはもう忘れてしまった。あのとき、あの一瞬のせつの声だけが、今も俺の頭にこだましている。
回想
男 なぜですか、なぜですか!!罰は私一人がうければいいはず、なぜ!・・キリスト教・・・?な・・何の話か・・・わたしにはさっぱり(むちで打たれるせつ)せつ!!おやめください!!・・・いいえ?私の命など・・・なにをおっしゃっているんですか?なにを・・・おかんがえになっているんですか!?俺の命など救わずともいい!せつを助けてくれ!!せつーーーー!!
間 急に静かになり
声1 おい、聞いたか。
声2 あぁ、何ともむごい話だな・・・。何も目をつぶさずとも・・・。
声1 なんじゃ、お前しらんのか。
声2 何を。
声1 目を潰されたそのあとさ、亭主が胸を突いたんだと。
声2 何だそりゃ、本当か?
声1 あぁ。こりゃぁ、恨まずにはいられねぇ話だな。
声2 ひでぇなぁ。
男 ・・・・せつよ。お前もそう思うたか。ひどい男だと恨んだか。・・・だがな、俺はお前を見ていられなかったんだよ・・・。目から一筋の赤い血を流して、俺の名を泣き叫ぶお前を・・・。・・・待っていろ。今に真に裁かれるべきものが裁かれるときが来るのだ。俺は、お前の血と共に、そいつらをきる!
回想終わり
男 始まりは俺が仕事で失敗をしたことだった。俺達がキリシタンであることをやつらは知っていた。だが俺がいなくなれば、働き手が確実に一人減り、村はまた苦しくなる。だから女であるせつを引っぱり出した。「お前の命は助けてやろう」?俺は、俺はそんなものいらなかったんだ!
場面、英美へ。
英美 11月7日、こんな目、なくなってしまえばいいのにと思った。そうすれば、私を殴る石井さんは見えない。私をこんなに苦しめるのは、きっと石井さんじゃない。わたしは、あの優しい声さえ聞ければそれでいい。そう思ってフォークで目を刺したら、あんまり痛くて声が出てしまった。お母さんがとんできて、悲鳴を上げていた。
場面戻る。
男 ・・俺は・・恨んでいる。
少女 ・・・・。
女 あなたは?
少女 私は・・・。
女 私はね、ホントに家族がいないの。・・・奪われた。
回想
女 ただいま!あれ、母さん?何それ。研究所で?あたしはいいよ。あたしそういうのすぐアレルギーとかなっちゃうんだもん。その日帰ると、母と弟は、見慣れぬ金属を首につけていた。私の家の近くには、人間開発だかなんだったかの大きな研究所があった。母はそこで働いていて、優秀だった弟はその手伝いをしていた。私達は幸せな毎日を過ごしていた。・・そう、あの日までは。母さん!ひろし!!ちょとまって下さい!何したんですか!!(周りの人間にすがりつく)だってテストだって、あんなに苦しんでるのに、やめて!早く止めて下さい!!はなしてよ!!母さん!!母と弟の悲鳴が響きわたり、二人は目を開けて死んでいました。・・・まるで私に何か言っているみたいだった。(軽く笑い)それは実験だったんだって・・・。長寿のね。長生きしたかったんだってさ!その場にいた男達は失敗だと口々に言いながらどこかへ消えた。・・・失敗?失敗も成功もあるのか!人間の命だろう!!科学の進歩、人間の幸せのために、多少の犠牲は仕方がない。・・わかってたよ。でもあの生活の何処にも不満なんてなかった、幸せだった!・・・母さんは、・・・ひろしは!人間の幸せのためとか、科学の進歩の犠牲になったんじゃない。お前の・・たったわずかな人間の欲のために死んでいったんだ!!
ふっとくずれて、泣き出す女
少女 ひどい・・ひどいよ・・・。
男 世の中というのは、時が流れても変わらないものだな。
少女 二人とも・・・・あなたも、この人も、かわいそう・・・。ひどすぎるよ・・・。ひどすぎるじゃん・・・。
男 ・・・お前は。
少女 ・・・ 私は・・・。
場面英美
英美 11月8日、石井さんがどこにもいない。目が見えないから、見えないのは当然だけど、声も聞こえないのだ。とっても寂しい。お母さんは、私のことをかわいそうという。なんでかはよくわからない。忘れなさいとも言った。バカみたい、私は石井さんのことがこんなに好きなのに。きっとあずさはわかってくれるの。・・・もしかしたら、ほかの音が大きすぎて、余計な音が聞こえすぎて、だから石井さんの声が聞こえないのかもしれない。だとしたら、こんな耳いらないや。11月9日、なんでなんだろう、全てがおかしい、狂ってるの、石井さん。私には見えないし、聞こえないし、感じない。あぁ、そうか、私が悪いんだ。私がいるからいけないんだ・・あなたに好きになってもらえないあたしなんて・・・。石井さん・・あたし、どうすればいい・・?・・どうすれば・・・あたしが・・・わるいの・・・あ・・あたしが・・・。いやだ。・・・い・・やだ・・いやだ、いやだーーー!!あたしが・・あたしが・・・あたしさえいなければいい!!(ナイフを手に取り胸を刺す。)
英美倒れる。そこに、4人(あずさ、あや、かおり、やすえ)が入ってくる。
4人 英美!!
暗転から あずさの独白
あずさ 私達が病室にはいっていったとき、英美はもう息をしていませんでした。よくもまぁというほど、心臓のど真ん中をナイフが貫いていたそうです。・・もう何日も、英美には会っていませんでした。久々にあった英美は、折れそうなほど細くやせ、・・・耳がありませんでした。
照明舞台全体に広がり ここは部室・・・なのかな。
かおり なんで・・・なんで・・・・。(泣きながら)
やすえ ・・・石井さんって優しい人だと思ってた・・・さいてーだよ・・・。英美、苦しかったろうな・・・。好きな人に暴力ふるわれて・・・。
かおり かわいそすぎるよー・・・。
やすえ 相談とか・・・してくれたって良かったのに・・・。
あずさ ・・・・・・。あ・・・部室日記・・・。(机に近づく)
3人 え?
あずさ 英美がつけてたの!(おそるおそる開く)10月・・・28日。
(暗転)回想
少女、女、男の練習風景。英美は机に向かって執筆中。
あずさ はい、わらったー。(とめる)
あや だってー。
ざわざわ。
あや ちょっとまってよ、今のアドリブ?予告してよー。
かおり 修行がたりん!
あや まじでー?
やすえが黒板(ノート)に何か書き込む。
あや ちょっと、何かいてんのよ。えぬじい?違うって、今のあたしが悪いのー?
あずさ (笑いながら)いいかげんあきらめなってー。
あや、かおり、やすえ、わらわらやっている。
あずさ なにかいてんの?
英美 んー、ぶしつにっき・・・。(執筆中)
あずさ そんなのつけてたんだ。
英美 うん! 12月28日!いよいよ引退公演に向けての練習が始まった。また5人でやりたかったから、うれしくてたまらない!
(暗転)元に戻る
やすえ ずっと・・5人でやりたかったから・・・。
あずさ ・・・うん。
かおり 英美・・・。
あや ・・・ねぇ、この劇、ホントにやる?
3人 え?
あや だってさ、これ、英美が作ったんだよね、5人でやろうって。自分で演出・・・つけるつもりだったんだよね・・。
3人 ・・・。
あや できる?あたしたちに。
間
かおり やめよっか・・・。
あずさ かおり。
かおり だって、4人でやったって意味ないじゃん!引退公演だって、言い出したのも英美だったし、英美がいなくちゃ・・・。
あや くやしいよ・・・。
やすえ 英美・・・どういう気持ちでこの話書いたのかな・・・。
あや え?
やすえ だって、「せつ」が目、つぶされるところなんか、自分の状況と一緒じゃん!
かおり あ・・・あたしのセリフにも「男を選ぶときには慎重に」・・・って、あるよ・・。(ちょっと笑う)
あずさ 本当に、やめちゃうの?
あや え?
あずさ ホントにこの劇やらないの?
あや だって・・・。
あずさ やろうよ。
あや でも!
あずさ くやしいよ、あたしだって!石井たくみなんか!!ぶっ殺してやりたいって、思うけど・・・。みんなこれ(脚本)、読んだでしょ?わかるでしょ?
3人 ・・・。
あずさ やろうよ・・・。
やすえ これってさ、(ふっと笑って)なんか、今のあたし達に向けて作られたみたいだね。
かおり (ちょっと笑って)うん・・・。
あずさ あや。
あや こんなんじゃ、英美にどなられるね。
あずさ え?
あや もっとしごいてよ、演出代理!本当の演出がいないからって練習さぼってるわけにはいかないよね!
あずさ ・・・うん!!
あや ほらほらー、かおりもやっちもいつまで泣いてんの。
やすえ あ・・・。(涙を拭く)
あや みせてやろうよ、やってみせよう!
かおり あたしがんばる。
あずさ かおり。
かおり 英美が伝えたかったこと、伝わると、いいな・・・。英美は壊れちゃっ
たけど、 英美の気持ちは、あたし達にあずけられてるんだもんね。
3人 うん。
暗転 芝居(元のシーンへ)
男 俺は憎い。全てが。
少女 わたしは・・・。
女 私は憎い。全てが。
少女 私は・・・。
男 復讐だ!俺は殺す!奴らを・・・絶対に許さん!
女 もう・・死にたい。かえったってお帰りを言ってくれる人はもういないもの!
少女 私は・・私は・・・自分が憎いの。さやかとの約束を破った、自分が憎いの。でもだからって・・・死のうなんて・・・思わないよ・・・。
男 嘘だ。
少女 嘘じゃない。
男 なぜ俺達がここに集められたか、答は簡単だ。何かを憎む気持ちが同じだったからだ。
少女 違う!・・・なんで私たちがここに集められたのか、答は簡単だね。あなた達をあたしにとめさせるためだよ!(間)私は、自分が、憎かった。だけど、死のうなんてちょっとも思わなかったよ。皮肉だけど、さやかがいたから、命の大切さって言うの、すごいわかるんだもん!生きたくても生きることのできない人・・・。その人のこと思ったら、自殺ほどバカなことってないんだもん!だから、死のうなんてこと、思わなかった。
女 嘘よ、そんなの自分の気持ち隠してるだけじゃない。あたしとあなたは違うじゃない。あたしは奪われたのよ。わかるでしょう?わかって・・・くれるよね・・?
少女 わかんないよ。
女 どうしてよ!
少女 なんで自分のことばっかりなのよ!
女 ・・・。
少女 なんで・・・なんでお母さんや弟さんの気持ち考えてあげないの?
女 わかったような口きかないでよ。
少女 じゃぁ考えた!?
女 考えたわよ!
少女 わかってないじゃない!!
女 ・・・。
少女 おんなじだよ、あたしと一緒。死んじゃった人の分、がんばって生きなきゃダメなんだよ。・・・さやかみたいに、小説は書けないけど、いつか自分の夢みつけてがんばるねってあたし約束したんだもん!さやかは、あたしが自分をせめて死ぬ事なんて絶対望んでない。憎んだって恨んだって何にもならないんだよ!!・・・(男に)そうでしょ?
男 お前に何がわかる。
少女 復讐って人殺す事じゃない、そんなの、そんなのおかしいよ!
男 おまえにわかるのか。愛するものが、自分の目の前で血を流すのを見たことがあるか!
少女 ないよ。
男 ならば!
少女 (さえぎって)でも!・・・今あなたがやろうとしてることは、奥さんもう一回殺すのとおんなじことだよ。
男 ・・・。
少女 憎んだって、恨んだって、なんにもならないんだよ。死んじゃった人は、もうなにも話してくれないけど、本当にその人があなたたちのこと愛してくれてたんなら、誰かを恨んで殺したり、自分を憎んで死んじゃったりなんて、望んでるわけないじゃない!!しあわせに・・なろうよ・・・。なんで過去を背負っていかなきゃいけないって決まってるの?忘れなきゃいいんだよ、責任とるとかなんだとか、自分を犠牲にしなくてもいいんだよ!!・・・しあわせに・・・なってください。
男いきなりフェンスへ
男 せつーーーーーーーーーーー!!(手を振っている)
女も走っていく
女 かあさーーーーーーーーん!ひろしーーーーーーーー!!(手を振る)
少女、二人の気持ちを理解し
少女 さやかーーーーーーーーーー!!(手を振る)
暗転 下手、男に照明
男 どれだけ時をさまよおうとも、お前の影は薄れはしない。すべての記憶を失おうとも、お前の声はいまだ響く。・・・もう、声はでない。しかし、お前が呼ぶのなら、出るはずのない声を出そう、聞こえるはずのない声に耳をすまそう。たとえこの口が、耳が、もうお前に見えぬとしても。
上手、女に照明
女 科学、文明、進化・・・すべては欲の塊であった。・・・だけどね、母さん、ひろし。私が変えてみせるよ、未来を夢見る人たちのために。
中央後方、少女
少女 さやかーー!!・・・ごめんねっ、作家の才能は私にはないらしいです。だから、編集者ってのもいいかなって思ってる。・・・ずっとそこで、応援してて。
中央前方、あずさ
4人 英美。
あずさ ったく、とことん男運がないんだから。・・・あんたのこころのすきま、うめてあげられなくてごめん。ひょっとして「あたしならそこはこうやったのにー」っていうところあった?情けない演出代理です。(間)・・・ばいばい、英美。
4人 忘れられない人よ、今君に会いたい。
THE END
(この脚本を使用したい方はなりこさん(fsn00436@net.sfsi.co.jp)へメールをお願いします。)